前回に引き続き、今回も"狙い"の施肥設計を行います。今回は、「害虫に強いコマツナを作る」ということにフォーカスして施肥設計をしてみます。
害虫にやられないためには
まず害虫にやられないためにはどうすればいいのか、施肥する際のポイントを整理していきましょう。
チッソ(堆肥やアミノ酸肥料)の使い方
- チッソ優勢だと、野菜から漏れるニオイが虫を寄せ付けてしまうので、総チッソ量を減らしチッソ優勢にしない。
- また、チッソ優先の生育になると、光合成で作られた炭水化物がセンイ作りではなく、細胞づくりに先に使われてしまうため、強いセンイづくりができず、虫にやられやすくなってしまう。
- 今回は夏栽培ということもあり、コマツナの水分(養分)吸収は活発に行われる。このことを利用して、生育のスピードは早めになるように、速効性アミノ酸肥料を使う。そうすることで、栽培期間も短くなるので害虫にやられるリスクも低減される。
- 堆肥はスピード優先を意識し、チッソ割合の多いもの(C/N比が低いもの)を選ぶ。(堆肥で、C/N比が「15/1」or「25/1」であれば「15/1」のほうがチッソ割合が多い)
- チッソが遅効きしてしまうと、細胞の数が確定している生育後期に必要以上に細胞が肥大してしまい、外壁が薄くなってしまう。そのためチッソが遅効きしないよう注意する。特に、発酵型アミノ酸肥料を使う際は注意。
ミネラルの使い方
- 虫が来ないためには、光合成能力をあげ炭水化物をたくさん作らせることで、センイづくりを積極的に行うようにする。そのため、光合成の要である苦土やマンガン、強いセンイ作りに役立つ石灰や鉄をしっかり効かせる。
- 「ミネラル優先」の施肥を心がけ、センイづくりをしっかりさせる。
- カリ過剰だと、石灰・苦土が吸収されにくくなる。結果的に、光合成能力・センイづくり能力に影響してしまうので注意する。
- 米ぬかや鶏糞などを使うことでリン酸過剰になると、鉄や亜鉛が吸収されにくくなるので注意する。
土の物理性
- 団粒構造をしっかり作ることで、根から十分に養分を吸収させる。
これらの点に注意しながら、施肥設計をしていきます。
施肥設計をしてみる
では、さっそく施肥設計をしてみます。今回は、以下の条件で設計をしてみます。
前提条件
- 育てる作物はコマツナ
- 夏栽培
- 土壌分析の結果は以下の通り
ミネラルの施肥設計
ミネラルの施肥については、こちらの記事をご覧ください。基本的には通常通りの施肥です。
- 光合成の要:苦土やマンガンはしっかり入れる。(上限値または上限値より少し多め)
- 強いセンイ作りに役立つ:石灰や鉄はしっかり入れる。(上限値または上限値より少し多め)
- 石灰や苦土が吸収されにくくなるので、カリ過剰にならないようにする。
- 鉄や亜鉛が吸収されにくくなるので、リン酸過剰にならないようにする。
こんな感じになりました。
堆肥とアミノ酸肥料の施肥設計
続いて、堆肥とアミノ酸肥料の施肥設計を行います。今回はコマツナの施肥設計なので、テキスト③「有機栽培の野菜つくり」をみてコマツナの施肥量を確認します。
コマツナの施肥
総チッソ量 | 8〜15kg |
---|---|
堆肥C/N比 | 15〜20 |
アミノ酸C/N比 | 夏(低) |
堆肥:アミノ酸肥料 | 6:4 |
今回は、「害虫にやられない」ということをテーマにしているので、"チッソの使い方"にある通り、総チッソ量は少なめの「8kg」を採用します。…と考えると、総チッソ量8kgで「堆肥6:アミノ酸肥料4」なので、堆肥とアミノ酸それぞれのチッソ量は以下の通りになります。
- 堆肥のチッソ量 4.8kg
- アミノ酸肥料のチッソ量 3.2kg
堆肥の選択
堆肥にはいろいろな資材がありますが、今回は生育スピードを早くする狙いがあるので、C/N比の低い(チッソ割合が多い・チッソ定数が高い)資材を選びます。以下のような堆肥資材がありますが、今回は、「大地の恵み(バーク堆肥)」を選択します。
あとは、堆肥のチッソ量が4.8kgになるように施肥量を決めます。「大地の恵」を195kg施肥したときに、堆肥のチッソ量が4.8kgになりました。
アミノ酸肥料の選択
アミノ酸肥料も、生育のスピードを早くするように設計するので、遅く効く発酵型アミノ酸肥料(なっとく有機やアミノバード)ではなく、速効性のアミノ酸肥料(フィッシュソリブル系のオーガニックシリーズ)を選択します。
今回は、オーガニック813を選択します。アミノ酸肥料のチッソ量が3.2kgになるように施肥量を決めると、オーガニック813が40kgのとき、3.2kgになりました。
以上で、施肥設計が終了です。人によっていろいろやり方があるのですが、私の設計はこんな感じになりました。
納豆器で害虫を防除
施肥設計は上記のように決まりましたが、さらに害虫のリスクを減らすために納豆菌を散布するといいそうです。よく発生するヨトウムシの被害を抑えることができます。
酢酸の散布でスピード調整
また、今回はスピード生育をさせる設計を行いましたが、スピードが早すぎた場合には、酢酸を葉面散布することで、炭水化物を供給し成長を遅らせることができます。酢酸の葉面散布により、外壁も強くすることができます。
夏の栽培には日除けと14時の葉水
さらに、夏の葉物野菜の栽培テクニックとして、日よけを行ったり、一番暑い時間帯に水を葉面に散布したりすると良いそうです。
- 葉面温度が33℃を越えると光合成ができなくなるため、寒冷紗などを使って日光を遮る。
- 植物は、蒸散するのと同時に水を吸収するため、水やりは朝やったほうがいい。朝は脱水結合で生じる葉水が出てる。
- 1番暑くなる時間帯(14時〜15時)に水を葉面散布することで、葉の温度を下げてあげる。
以上が、夏のコマツナ生育(害虫対策重視)の施肥設計になります。こういったテクニックをどんどん身に付けるようにがんばります。