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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

農業ICTの現状とこれから〜有機農業研修レポート〜

有機農業研修

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きょうの研修のテーマは、ズバリ「農業ICT」です。ゲスト講師として、ウォーターセル株式会社の藤原さんが新潟からお越し下さり、農業ICTの現状や営農支援ツールについて講義をしてくださいました。

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ウォーターセル(株) 藤原さんのご紹介

藤原さんは、秋田県出身で、ご実家は稲作専業農家だそうです。新卒でシステム会社に就職した後、2013年にウォーターセル株式会社に入社。現在は、スマート農業事業統括部の副部長を努めていらっしゃいます。

ウォーターセル株式会社

アグリノート | 農業は、記憶から記録へ

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画像引用:アグリノート

 

農業ICTについて

ITは情報技術、ICTは情報"通信"技術です。総務省では「ICT」という言葉を推進していることもあって、”ICT”という呼び名が一般的になったそうです。インターネットの普及にともなって人々の間でも一般的にICTが使われるようになってきました。

世界の動向としては、アグテック分野の投資額が増加傾向にあります。2010年のアグテック分野投資額は4億ドル(約491億円)だったのが、2015年には42億ドル(約5151億円)にまでなっています。5年間で約10倍にも拡大しています。

投資額は5000億円以上 急拡大するアグテック(農業テクノロジー)産業 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

農業先進国のオランダやイスラエル、アメリカはもちろん、中国やインドといったアジア圏でも農業ICTのベンチャーが増えてきているそうです。

Farmlogs

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画像引用:Farmlogs

Farmlogsは、アメリカの農家3分の1が利用していると言われている農業ICTサービスです。2012年創業で、圃場の作付計画や作業記録などが、スマートデバイスから行えます。アメリカは国自体、農業ICTに積極的に取り組んでいることも利用が進んでいることもありますが、普及率はすさまじいといえます。

Farm Management Software | Farm Record Keeping | Farming Software

日本では、ICT導入を"検討する”という程度の農家さんが多いですが、海外ではICTの導入が前提(当たり前)になっています。ただし、FarmLogsがそのまま日本で使われるかというとそうではなく、アメリカの農業形態にうまく条件が合っていることも、普及が進んだ一因です。日本でもICTサービスがいろいろ登場していますが、普及しているとはいえず、1,000ユーザーを獲得していれば、がんばっているほうという感じなのだそうです。

ICTトレンド

IoT(Internet og Things)

世の中に存在するモノに通信機能をもたせ、自動認識や自動制御、遠隔操作などを行うこと。Google Homeや自動運転自動車などが代表的です。センシングツールやドローンの活用も広がっています。

ビックデータ

膨大で複雑なデータを集積することで、起こりうる事象の予測を行ったり効率化しようとする技術。文字情報以外にも拡大され始めています(画像認識・音声認識)。店舗が配布するクーポンを、個人の購買履歴から算出して最適に配布するというのもビックデータの活用例です。

AI(人口知能)

学習、推論、判断といった人工知能を搭載したコンピュータ・システム。自然言語の理解や機械翻訳、エキスパートシステムなどがあります。

国内の農業ICT

ウォーターセル株式会社さんは2010年創業、2011年設立で、創業当時から農業ICTをテーマにシステムの開発を行っています。当時は、個別の農家さんが委託開発したシステムはあったものの、サービスとして提供しているのは数える程度だったそうです。

2010年当時の代表的サービス

ここ5年で農業ICTに参入した会社はかなり増えてきていて、農機メーカーもICTに進出しているそうです。どのサービスも実現したい世界観は似ていて、アプローチの仕方に特色があります。農業・食品産業技術総合研究機構の吉田 智一さんが作成した資料の中で、農業ICTの主要システムが紹介されています。(以下、一部抜粋)

【PDF】xCLOPコンソーシアム資料-営農はITがお手伝い

システム名称主な管理項目導入/運用コスト
GeoMation Farm 圃場・土壌・生産履歴・農作業日誌など 200万円~/構成により有償
農業日誌V6+ 農程,作業日誌,販売,集計 63,000円/会員制
facefarm 生産履歴,経営分析,各種集計 一般 年30,000円,など
agri-note 圃場・作業・生育・収穫,肥料・農薬など 年額39,800円(2012年12月より)
agricompass 生産履歴・生産管理・流通管理全般 照会(サービス構成に依存)
Akisai(秋彩) 販売・生産計画,圃場・作業・気づき・振り返り 有償/有償(月額4万円~)軽量版あり
CONNEXIVE農業ICTソリューション 環境データ,生育管理,診断・予測,営農日誌・農薬記録,など 月額98,000円~(選択するサービス構成に依存)
FARMS 圃場・作付・作業履歴・作業軌跡・稼働状況 無償/無償(協議会登録が必要)
PMS 圃場・作付・作業・生産出荷・資材在庫 無償/無償

現状の農場管理

経営計画から逆算して作業計画を行い、消費者へ出荷します。一部ICTを活用して業務を行っているものの、最終的には人の手で行われているのが実情です。理想の状況としては、これまで分散したところから収集していた情報を一元化し、管理をする状態をシナリオとして描いています。またそこから、ビックデータや人工知能を利用し、情報を元に”判断”するプロセスも効率化しようとしています。

先進的な農業ICT事例

以下のサービスは、ウォーターセルさんも連携したり共同開発をしているそうです。

Paddy Watch

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画像引用:PaddyWatch

センサーを田んぼにさすことで、水位、水温などセンサーで、昨年から実証実験を行っていて、今年から販売を開始したサービスです。新潟県が農業特区になっていることもあり、実証実験をしていたそうです。

スマート農業における水稲の水位・水温を計測する水田センサ PaddyWatch

Field Touch

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画像引用:株式会社IHI

宇宙開発の技術を活用したサービス。北海道でウォーターセルさんと共同して5年くらい実証実験をしているそうです。特殊なカメラを搭載した衛星を使って、作物の光合成の状況を可視化したり、エリアに気象計を置きミクロな気象・土壌データをモニタリングしたりといった総合的なプラットフォーム化を行っています。植生のムラがあるとわかれば、施肥をそのムラに合わせて行うことができるようになることを目指しています。

農林水産省公募の先端モデル農業確立実証事業にIHI農業情報サービスを用いた連携プロジェクトが採択 ~テーマは「“安定的に儲かる”農業モデルの構築」~|プレスリリース|2014年度|ニュース|株式会社IHI

輸出支援サービス(伊藤忠CTC)

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画像引用:伊藤忠テクノソリューションズ

日本は、世界的に観ても農薬使用が多い国です。また現状、農作物の輸出自体は少ないですが、今後の輸出拡大を目指して作られたサービスです。国によって使える農薬に相違があるので、栽培記録を元に、輸出先ごとに輸出可否判断などを行います。

CTC、ウォーターセルのアグリノートと連携する農産物の輸出支援サービスを開発|伊藤忠テクノソリューションズ

 

以上、農業ICTに関するお話でした。後半はいよいよ、ウォータセルさんが開発している農業支援サービス「agri-noto(アグリノート)」の使い方を教えていただきます。

後半の記事はこちらから 

ag.dotsnest.com

※この記事は藤原さんに許諾いただき、作成・公開しています。