きょうも施肥設計の講義です。少しずつ慣れてきました。またTips的なこともあるので、その情報もふまえて応用できるようになりましょう!
用意するもの
施肥設計では、以下の本や施肥設計ソフトを使います。
施肥設計ソフト
施肥設計ソフトは、以下の様な構造になっています。
施肥設計の仕方
① Dr.ソイルの測定を入力
Dr.ソイルの測定結果を入力します。すると、CECや上限値・下限値が自動計算されます。比重は変更せず、1.2のままにします。
② 石灰の設計
耕転深度10cmの補正値が上限値になるまで、施肥をします。資材としてはハーモニーシェルがオススメです。
③ 苦土の設計
耕転深度10cmの補正値が上限値になるまで施肥します。
<測定値が下限値を下回る場合>
下限値まで水溶性Mg(Mg含有量24〜27%)を施肥し、上限値までク溶性Mg(Mg含有量50〜60%)を施肥します。※ ブルーマグは水溶性とク溶性が混合されている資材でここでは使いません。
<測定値が下限値から上限値の間にある場合>
テキスト「有機栽培の野菜つくり」の施肥設計表を参考に、水溶性:ク溶性の割合を決めます。
④ 鉄・マンガン・ホウ素の設計
鉄とマンガンは上限値が同じ値になるように設計します。
葉物野菜ではホウ素過剰症が出ることがあるので、上限値以上には施肥しないようにしましょう。また欠乏症も怖いので、葉物の場合は追肥をすることも大切です。ホウ素は、試薬が高く測定しづらい要素です。植物系の堆肥にホウ素が含まれていることがあります。年に1〜2回くらいを目処に施肥すると良いでしょう。
⑤堆肥とアミノ酸肥料の設計
まず、堆肥のチッソ定数を入力します。テキスト「有機栽培の野菜つくり」の70ページにチッソ定数一覧があるので、原盤のC/N比を元にチッソ定数を季節に合わせて入力します。
次に、堆肥とアミノ酸肥料の施肥量を決めます。ミネラルの設計では、作物や季節に関係なく設計しますが、堆肥とアミノ酸肥料の設計はテキスト「有機栽培の野菜つくり」104〜105ページに記載されている設計表を参考に、作物や季節に合わせて施肥します。例えば、コマツナの場合は以下のようになっています。
チッソ施肥量 | 8〜15kg |
---|---|
堆肥C/N比 | 15〜20 |
アミノ酸肥料C/N比 | 夏:低 冬:高 |
チッソ割合 | 堆肥6:アミノ酸肥料4 |
夏の圃場であれば、アミノ酸肥料は夏は(低)なので、チッソ施肥量の8〜15kgの8kgで設計します。チッソ割合は6:4なので、堆肥4.8kg:3.2kgを施肥することになります。堆肥とアミノ酸の施肥設計では、「〓肥料成分量〓」に補正値が表示されます。
堆肥 | 遅行性チッソ |
---|---|
アミノ酸肥料 | 速効性チッソ |
堆肥とアミノ酸肥料の割合によって、生育のスピードをコントロールできます。生育スピードが早いと収穫期間も短くなり人出がなければ収穫が間に合わなくなります。逆に生育スピードが早ければ、作を早められるので年間収量の向上が期待できます。このように、圃場の運営方法やどんな野菜にしたいかで調整します。
⑥ カリウムの設計
カリウムが足りない場合は、カリウムの単肥料の施肥を考えます。
⑦ pHを確認する
堆肥には、石灰が含まれていることもあり、堆肥を施肥設計することにより、石灰の補正値が上限を超えている場合があります。ただ、石灰はすぐに全て溶け出すわけではないので、上限値の150%までは施肥してもOKです。(すぐに溶けない石灰資材を使っている場合に限る)同様に、150%以内であれば、次作の分まで石灰を施肥しておくということも可能です。
購入した堆肥に、石灰量が記載されている場合は、成分量に記載しておきましょう。pHは6〜7の間に収まっていれば問題ありません。
練習問題
6月に植える前提で、施肥設計をしましょう。
<測定値>
- pH(水) 6.0
- pH(塩化カリ)
- アンモニア態窒素 0.1
- 硝酸態窒素 0.1
- 可給態燐酸 40
- 交換性石灰CaO 100
- 交換性苦土MgO 10
- 交換性加里K2O 30
- ホウソ 0.1
- 可給態鉄 5.0
- 交換性マンガン 1.0
解答例
わたしの施肥設計はこんな感じになりました。教科書通りのスタンダードな設計をしています。
施肥量
補正値
Tips
比重
ドクターソイルは体積法のため「比重」を考慮せずに施肥設計できます。「比重」と書かれていますが、1.2のままにしておきましょう。
カキ殻石灰がおすすめなワケ
石灰資材でカキ殻を使ったほうがいいそうです。カキ殻は溶けると炭酸ガスが発生するので土壌団粒化に役立ちます。また、堆肥の放線菌を増やす役割もあるので、カキ殻を使うのがおすすめです。その中でも、ハーモニーシェルのような焼成カキ殻石灰は蒸し焼きにすることで、半分が水溶性になっていて、初期のカルシウム源としてとても有効です。
施肥する際はマスクをする
水酸化マグネシウムの粉を施肥する際は、マスクをしましょう。
葉の厚みは堆肥から来る
葉の厚みを持たせるには、アミノ酸肥料ではなく堆肥から来るチッソを利用します。堆肥8:アミノ酸肥料2で設計する農家さんもいるそうです。
チッソは1作ごとに入れる
石灰は上限値150%までは入れてもいいので、次作の分まで施肥することができます。しかし、チッソはそのようにできないので、堆肥やアミノ酸肥料を作ごとに施肥することが大切です。
この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。