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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

施肥設計ソフトを使って施肥設計!【総集編】

有機農業研修

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きょうは施肥設計の学習です。これまで何度か、施肥設計を学んできましたが、断片的だったので今回が総合的な学習になります。

まずは初期画面に戻す

施肥設計ソフトはExcelの形式です。過去に施肥設計をしていれば、その数値が残っている可能性があるので、まずは数値を入力欄(水色のところ)の数値を消してクリアにしておきましょう。

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施肥設計で理解しておきたい野菜の分類

植物は、種から根を延ばし、まずはどの土壌の質や水分量をセンサーのように感知しています。発芽させてから最初の3日で、どのくらいの土質か、自分がどれくらい生長するかを見極めるため、最初の3日はとても重要です。

植物の生長の仕方をベースに、ここでは野菜の特徴から大きく6分類しています。(テキスト「有機栽培の野菜つくり」55ページ)施肥設計は、このタイプ別の特徴に合わせて設計をしていきます。

栄養生長

あらゆる植物は、まず葉を出すので、"葉物”である時代があります。葉が広がることによって、光合成をし、ブドウ糖を作り出します。チッソの79%は、葉緑体になります。自然界では、追肥されることがないので、この環境で出来る限り根を延ばし、葉を広げたと思ったら、次の子孫のために生殖活動に移ります。

チッソがどんどん供給されることで、根や葉が伸びる時期が栄養生長ということになります。例えばナスやオクラは、チッソをずっと供給していると、葉をどんどん伸ばそうとし一向に実をつけようとしません。実を収穫したあとに、また新しい葉をつけさせようとするときには、チッソを追肥します。オクラは、葉の下に実ができるのでどんどん背が高くなります。家庭菜園でも、5段までは収穫できるそうです。このようにチッソをコントロールすることで、葉を作らせたり実の付け方をコントロールすることができます。

① 葉菜タイプ コマツナ、ホウレンソウ等
疑似生殖生長

レタスやキャベツは、コマツナなどとは違い、その葉をさらに結球させ、葉に栄養を貯めます。このときの生長を疑似生殖生長といいます。根菜類やイモ類も、疑似生殖生長段階でできる作物ですが、特徴があるので以下のように分類します。

② 外葉タイプ レタス、キャベツ
③ 根菜タイプ ダイコン、ニンジン、ゴボウ
④ イモ類タイプ ジャガイモ、サツマイモ
生殖生長

土壌のチッソ分もなくなり、葉や根が伸びきったら、植物は次の子孫を残そうと生殖生長に移ります。この時できるのが、トマトやナスなどの子房です。オクラやピーマンは未熟な実を出荷するので育てやすいですが、トマトやパプリカは熟すまで待たないといけないので、育てるのが難しいです。

⑤ 果菜タイプ ナス、トマト
④ マメ類タイプ ダイズ、エンドウ

この野菜の6分類によって、施肥の仕方は大きく変わります。詳しくはテキスト「有機栽培の野菜つくり」に記載されています。

葉菜タイプの施肥設計

ほとんどの葉物野菜は、周年栽培することができます。近隣の農家さんでは10作〜7作程度しているそうです。

チッソの量

植物は、まず根から伸ばすので、葉の重量の増え方は最初の方は少なく、あとからどんどん増えていきます。夏場の野菜は、葉の表面温度が上がり、温度を下げるために水を多く吸収しようとします。その分、水に溶け出すチッソが多く吸収されるため、水と一緒に吸収し早く生長します。葉の温度が33℃を超えると、葉緑体が爆発したような状態になり、葉が白く変色してしまいます。

一方、冬場は水の吸収が少ないため養分の吸収も積極的に行いません。そのため、冬場は育つスピードが遅くなります。チッソが切れてしまうと、子房作りに入るためチッソ切れを起こさないように、冬場のチッソの施肥量は多めになります。(同じ量でもいいけれど、微生物に食べれてしまう分や流亡してしまう分も考慮し、追肥しないですむよう多めにいれます)

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アミノ酸肥料のC/N比

アミノ酸肥料のC/N値は夏は低く、冬は高く設計します。

夏は日照時間が長いので、光合成する時間も長いです。光合成をたくさんさせるためにも、チッソの割合が多い(C/N値が低い)アミノ酸肥料を使うことで、どんどん葉を作らせます。一方冬は、日照時間も少なくじっくり栽培するので、ゆるやかにチッソを供給できるようチッソの割合が低い(C/N比が高い)アミノ酸肥料を使います。

ただ、冬にも夏と同じくチッソ割合が低い(C/N比が高い)アミノ酸肥料を使うやり方もあるそうです。速効性のあるアミノ酸肥料(抽出型アミノ酸肥料)を使うことで、冬でもスピーディーに生育している農家さんもいるそうです。この時、濃度障害などには注意が必要です。また、低温でも活動できる酵母菌(白神酵母など)を使うこともポイントです。※酵母菌はアミノ酸肥料の貯蔵庫として働き、硝化や微生物に食べられるのを防ぎます。アミノ酸肥料を使うときには必ず撒く菌です。

葉物のポイント
  • 葉物は一気に育てることが大切です。チッソ成分の高いアミノ酸肥料やチッソ成分の高い堆肥を使うことで、早い段階からチッソを供給し、葉づくりを促進します。気温が低ければ、光合成のスピードもゆっくりなのでじっくりと育てることができますが、ハウス環境では気温を下げることはなかなかできません。
  • 生育の最後に生育のブレーキをかけたい場合はお酢を散布します。植物がお酢(炭水化物)を吸収することで、植物体内のチッソと炭素の量のバランスを取ります。
  • 水はけの良い土壌でつくります。美味しい葉物は、ミネラルをきちんと吸収しているということです。酸素がなく(水が多い)根毛がでにくい土壌では、水に溶けやすいチッソが先行してしまい、ミネラルがあっても吸収できないという状況になります。
  • 乾燥しすぎる、アブラムシなどが寄ってくるので、注意が必要です。
  • 太陽熱養生処理をすることで土壌病害虫を防ぎます。
  • 光合成に関与するミネラル(苦土を中心に鉄、マンガン)や、葉の外壁に使われる石灰をしっかり使います。葉物野菜は自分の身を病害虫から守るため、外壁をしっかりしようと石灰をたくさん吸収します。
  • 硝酸態チッソの発生を防ぐため、潅水設備を準備しましょう。潅水の仕方は技術です。
  • ホウ素は微量要素で、切れるとダメですが過剰症も起こしてしまうので、注意が必要です。試薬が高額のため計測はできません。(目安は年1施肥くらい)ホウ素は植物の細胞をくっつける役割があるので、不足すると心腐れなどが起きます。
  • 石灰を多く吸収するホウレンソウやコマツナ、シュンギクは石灰を多めに施肥します。また、pHを急激に上げずに、長く石灰を効かせるために、ク溶性の石灰は粒でいれます。同様に、苦土もク溶性のものは粒でいれます。
  • 鉄、マンガンといったミネラルが効いていると照りのあり、厚みのある葉になります。鉄は呼吸(植物は呼吸することで養分を吸収)に関わるミネラルで、養分吸収に役立ちます。またマンガンは光合成などに役立つミネラルです。
  • 銅は、葉緑素の形成などの役立つミネラルです。アミノ酸をタンパク質に合成する酵素に、銅を使っているものが多くあります。銅が切れるとタンパク質づくりが上手くいかず、アミノ酸のまま滞留してしまいます。このアミノ酸を求めてアブラムシがやってきます。

コマツナの施肥設計をしてみよう

前段がだいぶ長くなりましたが、コマツナの施肥設計をしてみます。前提条件として、夏まきのコマツナで土壌分析の結果は以下の通りでした。

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資材を登録する

まずは原盤に資材を登録します。各資材のC/N値や成分量は、パッケージやパンフレット等に記載されています。

アミノ酸肥料は基本的に全部植物に使われるので、C/N比は空欄にしておきます。項目を増やすことはできないので、すでに登録されている資材で使わないものを消して新しく登録します。

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原盤への入力ができたら、基肥設計に戻り、各資材のチッソ定数を入力します。アミノ酸肥料は基本1.0です。夏と冬でチッソ定数が異なるので要注意です。チッソ定数はテキスト「有機栽培の野菜つくり」の70ページに記載されています。

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まずミネラルを設計します。耕耘深度10cmのところに表示されている数値が上限値になるように、上の設計エリアにいろいろな数値を入れていきます。

① 石灰を入れる量を決める

石灰を入れる量を決めますが、テキスト「有機栽培の野菜つくり」104〜105ページを見ると

石灰・・・ク溶性60(粒)・水溶性40

とあります。資材としては、ハーモニーシェル(ク溶性50:水溶性50)しかないのでこれを使います。教科書通りのク溶性60(粒)・水溶性40になるようにするには、施肥する際の工夫になるようで、ソフト上の操作としては、設計エリアの追肥項目に、ハーモニーシェルの施肥量を入力していき、下の施肥後の補正値が上限値になるように調整します。

消石灰を使うこともできますが、水とカルシウムになってしまうため土を締めてしまいます。ハーモニーシェルの原料であるカキ殻は、炭酸ガスとカルシウムになり、土壌団粒化に役立ちます。

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② 苦土を入れる量を決める

テキスト「有機栽培の野菜つくり」には、苦土の施肥量は【ク溶性60(粒)・水溶性40】とありますが、今回、マグネシウムが下限値にも届かないほど不足しているので、以下のように設計します。(下限値には達している場合は、指定の施肥比率になるように設計します。)

Mg率24〜27%が水溶性Mg(マグキーゼ)、50%がク溶性Mg(古代天然苦土)です。

(1) 水溶性Mg(マグキーゼ)を下限値まで入れます。

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(2) ク溶性Mgを上限値まで入れます。

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③ 鉄とマンガンを入れる量を決める

鉄とマンガンは拮抗性があり、互いを打ち消す性質があるので、施肥したときに同じ量になるように施肥します。(上限値が同じになるようにする。追肥量が同じということではない。)マンガンは試薬で検出できないため0.1と想定の測定値を入れています。

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④ アミノ酸肥料と堆肥を入れる量を決める

コマツナの施肥は以下のように定められています。

  • チッソ施肥量:8〜15kg
  • 堆肥C/N比:15〜20
  • アミノ酸肥料C/N比:夏は低、冬は高
  • チッソ割合:堆肥6、アミノ酸4

夏なので、全体のチッソ量を少なめに8kgに設定します。全体で8kgでチッソ割合は堆肥6:アミノ酸4なので、チッソ量=堆肥4.8kg:アミノ酸肥料3.2kgとなります。ただし、チッソ施肥量:8〜15kgは品種や地域によっても変わるそうです。近隣の農家さんに効くか、種苗屋さんに問い合わせをすると答えてくれるそうです。

チッソ量が堆肥4.8kg:アミノ酸肥料3.2kgとなるように、施肥量を決めます。資材は好きなものを選んでいいです。(ホントはコストや肥効を考慮します)

上の必要量に施肥量を入れると、下の肥料成分に、堆肥とアミノ酸肥料のチッソ成分量(kg)が表示されます。

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設計テクニック

夏はチッソ比率の高い(C/N比が低い)アミノ酸肥料を使うので、オーガニック432よりはオーガニック813を使うほうが少ない量で済みます。

堆肥は、大地のサプリよりソイルメークのほうがチッソ量が少なく、施肥する量も多くなります。ソイルメークはコストもかかるし、撒くのが大変ですが、多く撒く分まんべんなくなるので効果が安定しているといえます。また、CECが低く養分をあまり吸着できないい土壌では、ソイルメークのほうが有効だともいえます。

テクニックとして、大地のサプリを使う場合、堆肥6:アミノ酸肥料4を堆肥7:アミノ酸肥料3にするケースもあります。大地のサプリは、堆肥ですがC/Ñ比12と堆肥にしては、チッソの割合が高いです。最初の立ち上がりこそ芳しくないかもしれませんが、長期的にチッソを効かせることができます。

スピーディに育てたいか、じっくり育てたいかで、アミノ酸肥料と堆肥の使い方を工夫します。

  • 堆肥はブレーキ
  • アミノ酸肥料はアクセル

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④ 全体の微調整

カリの量をチェックします。カリは”リッチカリ”といって、上限値の2倍になっても、過剰症を起こすことはないので、上限値を超えていてもOKとします。カリはアルカリ性なので、使いすぎるとpHが上がってしまうというデメリットがあります。また、カリは水の吸収を促すので、使いすぎると根菜類の実が割れやすくなってしまいます。

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ホウ素の量をチェックします。不足しているので、ケルプペレット又はホウ砂を追肥して、上限値にします。ホウ素は試薬で検出できないうえに、過剰症が怖いので入れる場合は少なめにしたほうがいいそうです。

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最終結果はこんな感じになりました。土壌にとって最適なpHは6.5ですが、上限値7以下に収まっているので良しとします。

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10月に播種するコマツナの施肥設計

10月に播種する場合、以下のように数値を変える必要があります。

チッソ定数

夏と冬の間なので、チッソ定数を以下のように両者の間の数値を取ります。

  • C/N比11→ 夏0.95、冬0.57の間をとって0.76
  • C/N比15→夏0.75、冬0.45の間をとって0.6
アミノ酸肥料

コマツナのアミノ酸肥料のC/N比:夏は低、冬は高です。チッソ施肥量:8〜15kgなので、低と高の間をとって11.5kgに設定します。チッソ割合:堆肥6、アミノ酸4なので、堆肥のチッソ6.9kg:アミノ酸肥料のチッソ4.6kgになるように設計します。

このことを踏まえて、同じように設計します。結果はこんな感じになりました。

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施肥設計ソフトの使い方はなんとなくわかってきましたが、コスト面や収穫ペース(収穫の人件費や期間)をどうするかといった運営の仕方によっても施肥設計は大きく変わってきます。施肥設計ソフトを使えるだけではなく、自分で工夫できるようになるまで、使いこなせるようになりたいと思います。

これまでの施肥設計に関する記事はこちらから

ag.dotsnest.com

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追記

  • リン酸は160以上でなければ多少多くてもOK。リン過剰だと、根コブ病が発生する。 
  • 葉物は深度10cm、作が長い果菜類は深度20cmを使う。
  • 石灰、苦土、カリはpHをアルカリ(pHを高く)にする。ただし水溶性MgはpHに影響しない。
  • 自家製堆肥を、堆肥配合で作る際、水分を50〜60%、急速団粒のときはC/N比15、長時間団粒はC/N比25を目指して設計する。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。