ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

有機農業の歴史〜有機農業研修レポート〜

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きょうの研修では有機農業の歴史について学習しました。これまで植物生理や各栄養素など「理科」の内容がほとんどでしたが、今回は「歴史」のお勉強です。

農業が壊れると文明が崩壊する

農業の発祥の地は、現在のシリアと言われています。かつての文明は、農業が普及するにつれ、定住するようになり領地争いが発生しました。

失敗例:北朝鮮

北朝鮮は農業に失敗した国と言われています。農地を作るために山を切り開いたのですが、土留めがなかったために、表土が流亡してしまいました。これにより水力発電をするダムも埋まってしまい電力不足にも陥ってしまいました。また、化学肥料の大量投与や密植を指導したため、土の力がなくなり生産力が低下しました。

成功例:キューバ

キューバは政治的に鎖国に近い状態だったため、化学肥料が手に入りにくい状況でした。また熱帯の国だったこともあり、微生物や土壌生物が活発に働きます。また、日本やアメリカの技術者からミミズをもらい受けたことをきっかけに、ミミズによる堆肥づくりが盛んになりました。
空き地や学校のグラウンドも全て畑にするなど国民全員が団結して農業に取り組んだ結果、現在では自給自足の有機農業国になりました。

失敗例:ドイツ

化学肥料が開発されたのがドイツです。元々痩せた土地だったため、化学肥料の研究が進みました。ドイツは森を切り開いて畑にしましたが、表土を流亡させてしまい結果的に痩せた土壌しか残りませんでした。

現在のドイツは環境先進国として知られています。公共交通の見直しが進んでいて脱クルマ社会を目指しています。ドイツ人は森林浴や家庭菜園(クラインガルデン)が好きです。オーガニック食品の消費量も世界2位と、有数の有機野菜の消費量となっています。

有機農業のはじまり

イギリスのアルバート・ハワードは、産業革命以降、欧米農業が地力減退などバランスを失う中で、アジアの伝統農法から有機物を土に返す堆肥づくりを学びました。そこで、ヨーロッパの農業とは異なる、堆肥を使う農業を知りました。1940年出版の「農業聖典」で有機物を使った農業として”オーガニック”という言葉が世界ではじめて使われました。

オーガニックの最初のテーマは「持続可能な農業」です。その極意として、有機物(オーガニック)の活用や、堆肥を使った地力の保持、地域内での有機物資源の循環を紹介しました。アルバート・ハワードは、英国土壌協会(ソイルアソシエーション)を設立しました。英国のオーガニック製品の8割が認定をうけています。現在の英国王室もオーガニックを推奨していることもあり、イギリスでは有機農業が盛んです。

日本の有機農業の推進に関する法律

持続農業法施行

1999年に施行された「持続農業法」では、持続性の高い農業生産方式の導入を推進しています。その中で、エコファーマー制度がはじまりました。

特別栽培農産物に係る表示ガイドライン

「無農薬」「減農薬」「省農薬」といった様々な表示が乱立してしまったため、2001年に特別栽培農産物に係る表示ガイドラインが制定され、表示に関わるルールが決められました。日本は主要国のなかでも農薬使用量が多い国です。特別栽培ガイドラインに伴い、2001年からは農薬使用量が減少しました。

環境問題のはじまり

1962年レイチェル・カーソン『沈黙の春』が発売され、農薬などの化学物質の危険性を、鳥達が鳴かなくなった春という出来事を通し訴えました。それがDDTの世界的な禁止運動のきっかけになりました。

1972年にはシンクタンクのローマクラブが「成長の限界」の研究を発表し「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する。2030年までに経済破綻がおき、人口が減り始める。」と発表しました。

スウェーデン・ストックホルム国連人間環境会議

1972年スウェーデン・ストックホルム国連人間環境会議で、はじめて"環境問題”が取り沙汰されました。当時スウェーデンでは、近隣の工業国からやってくる有害物質による酸性雨の問題が深刻になっていました。

リオ・地球サミット

1992年のリオ・地球サミットが開催され、世界中の国が集まり環境について議論がなされました。そして「気候変動枠組条約」「生物多様性条約」が定められました。

GATT・ウルグアイ・ラウンド

1986年 - 1994年に開催され、農産物の自由化などについて交渉されました。これをきっかけにEU(EC)は、環境に配慮した農家に対して直接補助金を支払う取り組みを開始しました。その後、農作生産と切り離した補助金の直接支払いも行いました。そのため有機農産物を作る農家が増えました。一方日本は関税をかけることで自国の農業を守っていたため他の先進国に比べ有機農業をする農家はあまり増えませんでした。

  • 日本:高い関税をかけて自国の農業を守る
  • アメリカ、EU:自由貿易(関税ではなく補助金で守る)

日本の有機農業と海外の有機農業の違い

日本の有機農業は主に深刻な公害問題をきっかけに運動が始まりました。一方海外では、継続的に作物を得ることに着目して継続的な農業の必要性が高まりました。

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提携運動

消費者と生産者が互いに提携する取り組みが日本で始まりました。これが欧米にも知られ、Community Supported Agriculture(CSA)として広がっています。(一部では”TEIKEI”で通じるらしい)日本では衰退してきていますが、欧米では地域に根づいています。

発祥の違いから、日本と海外では有機農業に対する考え方も異なります。

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これからの有機農業

先生曰く、これからの有機農業は以下の点がポイントになるそうです。

  • 有機農業へのソフトウェアの書き換え(耕作放棄の農家・新規就農)
  • 農業は生命産業として再構築される
  • 自給率UPというよりは、食の持続可能性の問題
  • 企業の社会的責任(CSR)から共通価値創造(CSV)へ移行する
  • 有機農業は環境再生技術

"生態系と調和した農業"の基礎哲学

  デカルト パスカル
人間の理性は 万能である 限界がある
世の中は 全てに原因と結果がある 偶然に左右される
迷ったら あくまでもデータ重視 時には直感を信じる

農業はどちらか?といえば両者のハイブリッドが大切になるそうです。直感も効かせつつ、データを使うことが大切になります。

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その他、環境問題のきっかけ

ギルガメシュ叙事詩 

古代メソポタミアの文学作品「ギルガメシュ叙事詩 」では、物語の最後に以下の言葉があります。「私は人間の幸福のみを考えてきたのだ。そして人間の幸福のために、いかなるものも犠牲にしてもかまわないと思ってきたのだ。私はフンババの神と共に、無数の生きものの命を奪ってしまったのだ。やがて、森はなくなり、地上には人間と人間によって飼育された動物と植物だけしか残らなくなる。それは荒涼たる世界だ。人間の滅びに通じる道だ。(梅原猛『ギルガメッシュ』新潮社1988年より )

安田 喜憲著「森と文明の物語」 

地中海に広がる古代遺跡から北ヨーロッパ、そしてアメリカ大陸に至る森林調査の旅の記録をもとに、花粉分析と先端考古学の成果を駆使して森と文明との関わりを考察した、もう一つの世界史。(引用元:Amazon

一楽照雄

徳島県出身。有機農業の普及に務めた人で、日本有機農業研究会を設立しました。

有吉佐和子

作家。著書『複合汚染』。工業廃液や合成洗剤の危険性などが一般に認知されるきっかけになりました。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。