最近、植物工場系の本を図書館で借りてきて読み漁っています。
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↑これは植物工場についてざっと把握するのにちょうど良かったです。
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↑これはその名の通り植物工場を経営する上での課題とか戦略とか事例とかそういう話を把握するのに良い本でした。
・・・でも、別に"いわゆる"植物工場をしたいわけではないんです。ご説明させてください。
植物工場について
日本で「植物工場」と言われているものには、3つタイプがあるそうです。
- 人口光型
- 太陽光型
- 併用型
の3つです。それぞれ、人口光のみを使うもの、太陽光のみを使うもの、太陽光と補光としてLEDとか特殊な電球とかを使うものです。何も光源だけが相違点というわけではなく、それ以外にも様々な違いがあります*1。ただ便宜上そう呼んでいるだけです(多分)。
恐らく、僕を含めて非業界人が思い浮かべる"いわゆる"植物工場のイメージというのは、1つめの人口光型だと思います。↓こういうやつ。
画像は Innoplex 様より
それ以外の2つは外見からすると、農村地帯でよく見るビニールハウスに"近い"見た目をしているので、一見するとそれが工場だとは思えません。↓こういうやつ。
画像はTHE ROUND TABLE 様より
一般的なハウスと大きく違うのは、どれくらい環境制御をしているかというコントロールの度合いです。CO2濃度、土壌中(養液中)の栄養素、水分量、温度、pH、外の天候や風速などなど、様々なデータをセンシングして、そのデータをコンピュータで処理し、窓の開閉や潅水などを自動もしくは半自動でコントロールしています。
特に画像のような三角屋根のハウスはオランダによく見られるフェンロー型(ダッチライト型)と言われていて、高糖度トマトとかいちごといった果菜類などの高度な環境制御が必要なものが育てられていることが多いです。
スマート農業について
で、少し話題変わって、最近よく「スマート農業」という言葉を見聞きします。これは農水省が発端の言葉らしく、
ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業
とのことです。
参照元: 農水省 スマート農業の実現に向けた研究会
また同研究会の中間報告pdfによると、さらに以下の5つに分類されるそう:
なるほど。挿絵はおいといて、文字面だけ見ると植物工場は1~5まで全ての分類に当てはまりそうですね。ということで、個人的にはスマート農業は植物工場を包括する概念という認識になりました。
スマート農業を導入する背景
ここからが本題なんですが、(植物工場化を含む)スマート農業化は、個人的には今後日本で農業を営む上では避けて通れないテーマだと思っています。何故かと言うと、以前こちらのエントリーにも書きましたが、
2017年から、かつてないほどの規模で離農する人たちがでてくる
からです。つまり、
離農者が増える → 耕作放棄地が増える → それらを集約する農家が増える → 1農家当たりの経営規模が大きくなる → 効率化が求められる
という流れで大規模化・効率化が進むと思われます。大規模化(例えば20haとか)して一番効率化が望まれるのは、圃場が分散していることによる移動や資材の運搬による時間的ロスではないでしょうか。
例えば、ハウス栽培をしていて、「潅水を20分した後にハウスの通風窓を閉める」というルーチンワークがあったとします。これと同じルーチンをしなければならないハウスが3つも4つも分散していたら、移動だけでもかなり時間がかかります。また潅水が完了するタイミングも少しづつラグがあると思うので、それを加味して動かなければなりません。人員をエリア毎に分けて担当制にするなんてことも考えつくかも知れませんが、人件費はできるだけ抑えたいのが経営者としては本音の部分かと思います。
そういった面倒な手間を、なるべくコストをかけず効率化したいと思った時に、スマート農業の出番だと思うのです。もう少し言うと、既存のフツーのハウスを太陽光型/併用型の植物工場化していくことってできないの?と思うのです。
※ ただしこれは果菜/野菜類の栽培に限った時の話です(基本的に露地で栽培するムギとかコメは除いて考えています)。
その理由を、コスト面、技術面に分けてざっくりなシミュレーション形式でお伝えします。
コスト面
僕らのような新規就農者の場合、前述のような耕作放棄地を借りて農業を始めるとしても、いきなりコストをかけることはできません。まずは、出荷できるレベルの作物を作り、確実に経営基盤を固めていくことが肝要です。具体的には、1反150万程度の温室ハウスを立てて、その中で収益性が高く且つ育てやすい葉物類を作っていきます。例えばアブラナ科のコマツナやチンゲンサイは葉が商品になるので20~40日の短期間で収穫でき、周年で栽培できます。栽培期間が短いということは、トマト栽培のように誘引や間引きといった作業はないので初心者には比較的育てやすいです。
で、例えばコマツナが1反(20×50m)に約46,000株植わるとして、その2割が病害や虫食い生育不全、調整作業とかでロスとして残り36,800株。3株で大体1パック分の150gとれるとしたら、1反で出荷できる量は12,267パックです。1パック100円で売れるとしたら1作当り120万の売上になります。
コマツナであれば年6~8回転できるらしいので、8回転するとして960万の売上です。これが2反あれば、約2000万の売上です。
そこから諸原価や人件費など引いていくと手元に残るのは半分といいます。なので、2反のコマツナやチンゲンサイを1年やったとして、1000万の利益になります。
ただし、これはあくまで理想論で、実際は借り受ける耕作放棄地の改善に時間を要したり、台風や水害でやられたり、単純に栽培ミスで作物をだめにしたりで1~2年は経営を安定させるのに時間がかかると思われます。ということは大規模化するのはもっと後になるでしょう(生意気な物言いですね...)。
つまり、「スマート農業を導入しよう」と思うくらいに大規模化した時に手元にあるのはフツーのビニールハウスばかり... という状況があるんじゃないかと思っています。
ということは、最初にハウスを建てる時から、後々の自動化とか効率化を考えて、ある程度拡張性を持たせて設計しておくことが大事なんじゃないかと思うのです。
技術面
では、どういうふうに設計すればいいのか?
・・・
残念ながらそれは今の段階では情報不足でどう解決したらいいのかわかりません...。
ただ、ハードの部分では、
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この辺をよんでみれば、何か見えてくるかなぁとは思っているのですが、まだ身近に読める場所がないので読めていません。。近々図書館に購入依頼をだしてみようと思います。
ただ、ソフト/ミドルの部分で、現状見つけたものでいいなぁと思っているのは、株式会社ワビット様のUECS-Pi(ウエックスパイ)です。
こちらは、ありがたいことにオープンソースです。クラウドにデータを蓄積して閲覧する機能は有償なのですが、それ以外は基本的にオープンにされています。各種センサ類とマイコン類を自分で調達してきて、組み立てて、ソフトを導入する、というDIY型のツールです。しかも導入マニュアルや拡張SDKまで提供されているので至れり尽くせりです。ITあがりの人間がいれば、自分で挑戦してみるのもありなんじゃないかと思っています。というかやってみたい!と思うのがエンジニアな人々の性(SAGA)じゃないかと思います。
まとめ
結局スマート農業云々いって勝手に混乱してるんですが、このポストで言いたいことは、
大規模化して大量にあるビニールハウス群の効率化を考えた時に、コントロールの度合いという意味合いでいくと、今言われている太陽光型/併用型な植物工場に生まれ変わることができるんじゃないか?ということと、じゃあどういう形が落とし所になるんだろう、ということを考えていきたい。
ということです。
ということで、今後自分で落とし所を探っていきたいと思いラズベリーパイ3も買ってしまったのでテクニカルな投稿もあるかもしれません...。がんばります。
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*1:詳しくは前述の『図解でよくわかる植物工場のきほん』が非常に参考になりました。