ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

ミネラル【ホウ素B ・マンガンMn・鉄Fe編】

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生命維持に必要なミネラル。これまで、石灰・苦土・について学習してきましたが、今回はホウ素(B)・マンガン(Mn)・鉄(Fe)について学んでいきます。

ホウ素B

ホウ素は微量要素なので、利用する量は少ないですが、作物によっては欠乏症を起こしやすいため注意が必要です。ドクターソイルでは、試薬が高いためホウ素の量は測れません。ホウ素過剰症もあるものの、欠乏症のリスクが高いため、必ず入れるようにします。

ホウ素の98%は細胞壁にあり、細胞と細胞をつなぎ合わせる役割があります。欠乏症が起きると細胞と細胞の間に隙間ができます。隙間が空いてしまうとそこに水が入り、細胞間同士の連絡がスムーズにいかなくなり栄養の供給が偏ったりしてしまいます。残り2%のホウ素は細胞内にあります。京都大学の実験で、ホウ素を培地から除くと1時間以内で細胞が死ぬことが明らかになっています。

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画像引用:ホウ酸架橋率を指標とする作物のホウ素欠乏診断

人間にとってのホウ素は、カルシウム、マグネシウムといっしょに骨の形成や維持に必要な栄養素です。

ホウ素の致死量は2.6g〜3.5g(ホウ酸で15〜20g)なので、施肥をする場合は粉塵マスクなどを利用しましょう。単肥の「STボロン」やマンガンと鉄をホウ素に加えた「ケルプペレット」といった肥料があります。ホウ素は鉱山などから採掘されています。

身近なホウ素の活用
  • 防虫剤のホウサンダンゴ
  • 耐熱ガラス
  • 半導体
  • コンタクトの殺菌液 
ホウ素欠乏

堆肥は植物の残渣なので、当然植物内の細胞にホウ素が含まれます。堆肥を使っている場合、ホウ素欠を起こす場合は少ないです。

新しい細胞を作るときにホウ素が欠乏していると、細胞同士をうまく結合することができずそこから腐ってきてしまいます。ホウ素は実の中にどんどん送り込まれます。そのため実のなる果菜類や重量の重たい葉物を作る場合はホウ素欠に注意が必要です。ホウ素欠乏は、石灰欠乏のときと同様、成長点にでます。石灰を充分にいれていても症状が出る場合はホウ素欠の疑いがあります。

ホウ素欠乏症の症状

鬆入りのだいこんやカブ
ホウ素欠乏が起きると、細胞同士が離れ内出血を起こした状態になり、細胞が死んでしまい鬆(す)が入ります。そして、鬆入りのだいこんやカブができてしまうことがあります。
ブロッコリーの座屈
有機栽培でもホウ素欠が起きると、ブロッコリーの茎が弱ってしまいブロッコリーの座屈がおきてしまうことがあります。
トマトの茎の芯のコルク化
トマトの茎の芯のコルク化は、茎の芯から枯れる減少。根が健全でも葉が栄養を吸えなくなってしまいます。石灰欠乏のときと同様、成長点にでます。石灰を充分にいれていても症状が出る場合はホウ素欠の疑いがあります。
キュウリのくねくね曲がりや表皮の溶け、鬆入り、根毛がなくなる
細胞同士がしっかり付いていないので、細胞が作られるにつれぐにゃぐにゃと曲がってしまいます。ホウ素欠乏が深刻になると、茎の芯がコルク化(枯れる)し、根も枯れます。
白菜のごまふり(ゴマ症)・芯枯れ
細胞同士が離れて、そこから腐ってきてしまいます。白菜のゴマ症は以前はポリフェノールと言われていましたが、ホウ素欠で起きる減少だと分かってきています。

イチゴの炭そ病
イチゴの炭そ病は、人間界における”ガン”のような病気だと思われていました。最近の調査で、ホウ素欠乏が原因だと分かったそうです。収穫すればするほどホウ素が実として出て行ってしまうため不足が起きやすくなります。ホウ素が不足が進み、茎がコルク化してしまうと成長点に栄養を送ることができません。

ホウ素の過剰症

ホウ素が過剰になると細胞が死んでしまいます。ホウレンソウやチンゲンサイ、トマトの葉の縁が枯れ始める(クロロシス)と、ホウ素過剰症の疑いが高いです。葉物の野菜の場合、過剰症は葉に出てしまうため、特に注意が必要です。(堆肥を使う場合は、ホウ素の追肥は不要の場合が多い)

マンガンMn

マンガンは、鉄と同じくミネラルの中量要素です。

マンガンの働き
  • 酸化還元反応(酵素)
  • 酵素の働きで使われる。
  • 葉緑素の生成や発育に関わっている
  • ビタミンCの合成
  • 二酸化炭素の吸収に関わっている
  • 適切な施肥で耐病性・耐寒性がUP
  • 脂質代謝、膜形成に関わっている
  • リノール酸が減少
  • オレイン酸とα-リノレン酸は増加
マンガンの特徴
  • マンガンは植物体内で移動しやすい。
  • 葉面散布した場合、葉面には効果がでるが、根には転流しにくい。
  • 根にマンガンを吸収させたい場合は種子処理や育苗期に吸収させる。
マンガンの欠乏

マンガンが欠乏すると、膜グラナが減少するため葉緑体の膜の崩壊を起こします。葉を太陽に透かしてみてスカスカしてみえると、マンガン欠乏の場合が多いです。

鉄Fe

鉄はマンガンと同じく、ミネラルの中量要素です。

鉄の働き
  • 糖からエネルギーを取り出す呼吸に関与
  • 葉緑体作りに使われる
  • 光合成の光化学系Ⅰ(水が水素と酸素に分解され、水素がNADP+にくっつきNADPHになる)
  • 植物色素の生成(リコピン、ポリフェノール、アントシアン等)
鉄の特徴

鉄の吸収量が増えるとビタミンAの含有量が増えます。

鉄欠乏症

鉄は植物体内での移動が少ないため、鉄が不足すると、生長点から先に症状が現れます。

植物の鉄吸収のしくみ

イネ科以外の植物は、Fe2+(二価鉄)の鉄を吸収します。土壌にある鉄は、Fe3+(三価鉄)の状態で存在しています。

イネ科以外の場合

根から水素イオンが放出されます。このとき一緒にフェノール性酸も放出し、土壌にあるFe3+(三価鉄)を有機酸とキレート化した"キレート三価鉄"にします。

"キレート三価鉄"は根から吸収され、細胞膜外にあるFROという酵素によって、"キレート二価鉄"になります。最後にキレートの結合が外れて細胞膜にあるIRT(トランスポーター)から細胞質内へ吸収されます。

イネ科の場合

イネ科だけは特殊な鉄吸収の仕組みをもっています。イネ科の植物は"ムギネ酸"を放出し、三価鉄をキレート化します。その後、"キレート化三価鉄"をそのまま細胞内へ吸収することができます。

この特殊な鉄吸収の仕組みがあるため、イネ科の植物は、鉄の吸収がスムーズです。

鉄とマンガンは同量になるよう施肥

鉄とマンガンは施肥量が同量になるよう施肥設計をします。

土の中には、酸素が嫌いなバクテリア”鉄バクテリア”と”マンガンバクテリア”がいます。”鉄バクテリア”は鉄イオンを吸収して酸化鉄をつくり、”マンガンバクテリア”はマンガンイオンを吸収して酸化マンガンをつくります。

鉄とマンガンを同量入れることで、”鉄バクテリア”と”マンガンバクテリア”を同じ力で拮抗させバランスを保っている状態にします。もし鉄バクテリアが優勢になってしまうと、マンガンバクテリアの働きが残ってしまい、土壌にはマンガンだけが残ってしまいます。

マンガン&鉄が堆肥に食われる

pH=6.5(最適値)の堆肥の中では、マンガンバクテリア(マンガン酸化菌)が活発に動きます。そのため、堆肥を入れるとマンガンバクテリアが活発に働きマンガンを酸化マンガンに変えるため、マンガンが少なくなる傾向があります。

同様に、堆肥(pH=6.5)では、鉄バクテリアも活発になるため、堆肥をいれると鉄バクテリアが鉄を酸化させます。そのため鉄が少なくなる傾向があります。

ホウ素、鉄、マンガンはアルカリ性で溶けづらい

また、鉄、マンガン、ホウ素はアルカリ性の土壌で溶けづらいという特徴があります。

鉄とマンガンは検出されない?

鉄とマンガンは堆肥の有機物に吸着され、ドクターソイルを使っても検出されない場合があります。そういう場合は、土を一度焼くことで有機物を燃やして分析します。それでも検出されない場合は、鉄もマンガンもないと考えて良いです。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。