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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

ミネラル【硫黄(S)・リン酸(P) 編】〜有機農業研修レポート〜

有機農業研修

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今回はミネラルの中でも「硫黄(S)」と「リン酸(P)」についての学習です。

ミネラル一覧 
多量要素 リン酸P、カリウムK、石灰Ca苦土Mg、硫黄S
中量要素 鉄Fe、マンガンMn
微量要素 銅Cu、亜鉛Zn、塩素Cl、ナトリウムNa、ホウ素B、モリブデンMo
例外 ケイ酸Si

硫黄Sとは

硫黄は、多量要素でチッソを効かせるために絶対必要な要素です。

硫黄の役割
  • タンパク質の生成
  • 根の発達
N/S比率

全チッソに対する硫黄の必要量は植物によって決まっています。これをN/S比率といいます。

  • 葉の面積で、必要なチッソの量がきまる。
  • 必要なチッソの量で硫黄の量がきまる。

主なN/S比
トマト12/1、オクラ8/1~9/1、ダイズ20/1、トウモロコシ15/1~16/1

硫黄欠乏症は出やすいが過剰症は出にくい

過剰に硫黄を撒いたとしても、根は積極的に吸いません。生体内でも余剰な分は液胞中に硫黄イオンの形で貯蔵したり、グルタチオンとして貯蔵されます。欠乏症の場合は、根は低濃度の硫黄も吸収するので、土中の全ての硫黄分を吸いつくし、土の硫黄量はゼロになってしまうこともあります。欠乏してしまうと、症状としては出にくいのですが、結果的に野菜の風味も悪くなったり、根も伸びなくなったりするため収量に影響します。

生物の元素含有量は、

チッソ > カルシウム > リン > 硫黄 > カリウム > ナトリウム

の順で多いため、硫黄は多量要素です。そのため、堆肥を使っていると、硫黄が不足することはほとんどありません。

硫黄欠乏症の主な原因
  • 空気中の硫黄分が減っている。
  •  亜硫酸ガスでも低濃度なら葉面からでも吸収できる。
  • 日本は火山灰土壌が多い(硫黄分が多い)ため油断していると欠乏しやすい。
  • 堆肥を使っていない。
硫化水素 H2S の発生を防ぐには酢を撒く

畝に水が溜まって水没したとき、硫化水素が発生しやすくなります。「硫化水素(腐敗物質)」は、嫌気状態で活動する腐敗菌によって作られます。硫化水素が気化して植物に触れてしまうと、葉が枯れてしまいます。

雨が続いて水が溜まりそうなときは、対策として食酢を撒きます。水素と硫黄が合成して「硫化水素 H2S」になりますが、食酢を撒くことでこの合成を防ぐことができます。

リン酸とは

リン酸は多量要素で、酸素とむすびついたリン酸の形で植物に吸収されます。生物の元素含有量においてもリン酸は多いので、堆肥にも多く含まれています。

リン酸の役割
  • 細胞の核の成分である核酸 (DNA)
  • 細胞膜の成分であるリン酸脂質
  • 酸化還元補酵素(NADP)
  • エネルギー転換をつかさどるアデノシン3リン酸(ATP)
  • 光合成におけるエネルギーの一時保管
リン酸施肥のポイント

リン酸の使い方には以下のポイントがあります。
追肥ができない

リン酸がない土壌だと植物が感知すると、リン酸を吸わないように生育してしまうため。特に苗のときにリン酸欠乏を起こさないよう注意しましょう。

基肥にリン酸を効かせる
リン酸は植物内で転流しやすいです。リン酸の貯えの少ない生育初期に十分な量を与えておけば、後期に供給が絶えても体内でやりくいのつけやすい養分といえる。
水に溶けやすい
水を多く与えると、どんどん下に流れてしまい流亡しやすいです。(土壌状態による)

暖地と寒地で効き具合が違う

暖地では少量のリン酸でもよく効き、体内リン酸含有率が低くても生育が旺盛になります。逆に寒地では効きづらくなります。

リン酸欠乏の症状
  • 生長点付近の細胞の分裂低下、草丈の低下、分蘖の低下。
  • 子実形成も悪くなる。
  • 暗緑色となり、しばしば下葉や茎の下部が枯れてくる。
リン酸の過剰障害

リン酸過剰土壌では、悪い菌も活性化してしまい、バクテリアによる病気が発生しやすくなります。

  • アブラナ科の根こぶ病
  • スイカのホモプシス根腐病菌による急性萎凋症
  • フザリウム菌によるレタスの根腐病
リン酸の拮抗作用と相互作用

リン酸が過剰になると、ミネラルの拮抗作用により、他のミネラルの吸収を妨げてしまいます。

拮抗作用
リン酸 ⇔ 亜鉛 (細胞分裂に関与)
リン酸 ⇔ カリウム
相互作用
リン酸 - マグネシウム

低リン酸に対応する植物の戦略

リン酸が少ないと、植物は以下の対応を行います。
① 根からクエン酸を分泌
クエン酸を根から分泌して、難溶解性のリン酸を可溶化する。 (リン酸をがんばって吸収しようとする。)

② 根面の酸性ホスファターゼを活性する
ホスファターゼは、有機態リン化合物を分解する働きのある酵素です。

③ 高親和性トランスポーターを活性化する
トランスポーターは内側と外側の酸とアルカリの濃度勾配を利用して、プロトン(水素イオン)とともにミネラルを供輸送する仕組み。ポンプはエネルギーを直接消費して電気化学ポテンシャル勾配に逆らって能動輸送する仕組みです。

④ 体内の細胞でリン酸を有効活用
体内にすでに吸収しているリン酸を有効活用するように全身の細胞に命令を出す遺伝子が発動します。

⑤ 菌根や根圏微生物が活性化
菌根など共生微生物やリン酸溶解菌など根圏微生物が活性化します。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。