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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

施肥設計ソフトの使い方【苦土(マグネシウム)編】〜有機農業研修レポート〜

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前回行った、堆肥の施肥設計に続き、今回はミネラルの一つ「苦土(マグネシウム・Mg)」の設計の仕方を学習していきます。

堆肥の施肥設計についてはこちらをご覧ください。

ag.dotsnest.com

苦土(マグネシウム)とは

ミネラルの働きの講義などでも学習しましたが、苦土についてもう一度復習します。

マグネシウムは葉緑体の中心成分で、ミネラルの多量要素です。マグネシウムはアルカリ性のミネラルです。植物の葉緑素に使われているマグネシウムの量は、植物全体のマグネシウム量の10%と言われています。マグネシウムを必要とする酵素は、人体で350以上あり、生き物にとってなくてはならないミネラルです。

<ミネラルの多量要素>

苦土(Mg:マグネシウム)、リン酸(P)、カリウム(K)、石灰(カルシウム:Ca)、硫黄(S)

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マグネシウムの働き

・糖分造成促進
苦土は葉緑素の中心要素。苦土の欠乏は、光合成におけるブドウ糖合成に関わります。

・リン酸の吸収、移動
苦土が一定量ないとリン酸を吸収しないことがわかっています。リン酸を与えているのに効かない場合は、苦土欠を起こしている可能性があります。

・デンプンの転流、脂質の生成
光合成ができず、ブドウ糖が作れなくなると、葉緑素にあるブドウ糖を成長点に送ります。この時、苦土がないと送ることもできません。

・茎葉の健全強化
苦土は細胞中0.2%以上ないと、細胞が死んでしまいます。そのため植物の生命維持にも苦土は重要です。

・病害抵抗力強化
苦土が効いていないと病気になりやすくなります。お米のイモチ病も苦土欠が原因である場合が多いです。

・隔年結果の防止
化成栽培から有機栽培に転換し3年くらいはよく獲れるが、その後、ぜんぜん収量が上がらなくなる現象、いわゆる"頭打ち現象"では、特に苦土欠乏が起きている場合が多いです。

・酵素の活性化
・根腐れ、芯腐れ、空洞化防止

苦土欠乏症の症状

苦土欠乏を起こしている圃場は多いと言われています。苦土欠乏が起きている場合は、下の葉から枯れていきます。(ちなみに、前回学習した石灰(Ca)が欠乏している場合は成長点から枯れていきます)

過去の農業では、NPK(チッソ・リン酸・カリ)の肥料を撒けば良いという感覚があったため、苦土欠になるケースが多いそうです。

苦土欠乏している場合の施肥設計

苦土の施肥設計の仕方は、テキスト「実践!有機栽培の施肥設計」73ページも記載されています。これはマグネシウム欠乏のケースを前提に解説されています。

本来はテキスト③189ページにある野菜別に指定されている指示とおりに水溶性Mgとク溶性Mgを設計しますが、今回は苦土が欠乏していて緊急事態を想定した設計を行います。そのため、すぐに効く「水溶性Mg」とすぐには溶けずにあとから効く「ク溶性Mg」のバランスを考慮して施肥していきます。

<苦土欠乏対策の施肥設計>

  1. 下限値まで水溶性マグネシウムを入れる
  2. 上限値までク溶性マグネシウムを入れる
  成分 Mg率 主な資材
水溶性Mg 硝酸マグネシウム
⇒硫黄S(酸性)とMg(アルカリ性)
24〜27% マグキーゼ
ク溶性Mg 水酸化マグネシウム
⇒水(中性)と苦土(アルカリ性)
50% 古代天然苦土

施肥設計の方法

苦土欠乏をしている場合の施肥設計について解説していきます。

① 土壌分析の測定値を入力

ドクターソイルで土壌分析した計測値を、施肥設計ソフトに入力します。

② マグネシウムの施肥量を入力

施肥量「必要量kg」を入力していき、耕耘深度10cmの項目に表示される数値を、マグネシウムの上限値に近づけます。入力する際は、以下の順番で入力していきます。また、作が長い場合などは、耕耘深度20cmなどを使う場合もあります。

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(1) 水溶性Mgを下限値まで入れる

まず水溶性Mg(マグキーゼ)の施肥量を入力し、耕耘深度10cmの項目が下限値を超えるようにします。

(2) ク溶性Mgを上限値まで入れる

次に長く効くク溶性Mg(古代天然苦土)のミネラル資材を入れて、上限値になるようにします。

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練習問題

以下の測定値の場合、Mgの施肥設計を行いなさい。マグネシウム欠乏状態であることを考慮して設計を行うこと。

  • pH 6.0
  • アンモニア態窒素 0.1
  • 硝酸態窒素 0.1
  • 可給態燐酸 25
  • 交換性石灰CaO 100
  • 交換性苦土MgO 1
  • 交換性加里K2O 35
  • ホウソ 0.1
  • 可給態鉄 0.1
  • 交換性マンガン 0.1
解答例

① 測定値を以下のように入力します。

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マグネシウムの項目は以下のとおりになっています(下限値は18、上限値は28)

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② まずは、下限値18になるまで水溶性Mg(マグキーゼ)をいれます。施肥量80kgで、耕耘深度10cmの項目が18になりました。

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③ 次に、上限値28までク溶性Mg(古代天然苦土)を入れます。22kgを入れると、耕耘深度10cmの項目が28になりました。

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これでマグネシウムの施肥設計完了です。
解答例・・・古代天然苦土:22kg、マグキーゼ:80kg

ワンポイントテクニック

追肥の項目を利用する等して、2つの肥料を分けて入力すると、肥料成分量エリアにそれぞれのMg量が分けて表示されます。ゼロベースでマグネシウムの施肥設計を行う場合、野菜ごとに指定されている水溶性とク溶性の比率(テキスト③189ページ)になりように設計する必要があります。

例・・・キュウリ⇒ ク溶性Mg(粒) *60%:水溶性40%
(粒)というのは、ク溶性肥料は粒で入れなさいということです。

その際、同じ重さになるように設計しないといけないため、2つのMg量がそれぞれ分かるように入力しておくと便利です。

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分けて入力しておくと、肥料成分量のエリアに、苦土量(kg)がこのように分けて表示されます。

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苦土を入れることによるpHを考える

マグネシウムはアルカリ性なので、溶けると土壌pHが上がります。水溶性の硫酸Mgは、硫黄S(酸性)と苦土Mg(アルカリ性)なので、土壌に溶けてもpHは上がりません。ク溶性の水酸化Mgは、H2O(中性)と苦土Mg(アルカリ性)なので、土壌にとけるとアルカリ性が強くなってしまいます。

水溶性の「硫酸Mg」⇒ 硫黄S(酸性)と苦土Mg(アルカリ性)

ク溶性の「水酸化Mg」⇒ H2O(中性)と苦土Mg(アルカリ性)

苦土の他にも他のミネラルを設計していくと、pHが高くなる場合があるので、それを考慮してMgの施肥量も調整しましょう。

施肥設計は人によってやり方がある

先生が施肥設計を行う場合、下限値と上限値の間の値くらいまで、水溶性Mgを入れ、ク溶性Mgは20cm耕耘の項目で、上限値まで入れるそうです。またク溶性は溶けにくいものを使うそうです。このように施肥設計には人によってやり方があるので、上記の使い方をマスターした上で、応用できるようにしましょう。

通常の設計順序

今回は、苦土に注目して施肥設計を行いましたが、施肥設計は以下の順序で行います。

  1. 石灰を入れる量を決める
  2. 苦土を入れる量を決める
  3. 鉄とマンガンを入れる量を決める
  4. アミノ酸肥料と堆肥を入れる量を決める
  5. 全体の微調整とカリを入れる量を決める

今回の授業は以上です!!施肥設計についてはまだまだ学習すべきところがあるので、ソフトを操れるようになるべく、がんばりたいと思います。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。