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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

施肥設計ソフトの使い方【堆肥設計編】〜有機農業研修レポート〜

有機農業研修

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今回は、施肥設計ソフトの具体的な使い方をみていきます。まずは「堆肥設計」にフォーカスして学習していきます。施肥設計ソフトは、小祝 政明先生著の『実践!有機栽培の施肥設計: 設計ソフト付き 』に付録としてついています。

施肥設計ソフトの構成

  1. 施肥設計シート:土壌分析測定値の入力
  2. 原盤シート:購入資材の登録
  3. ぼかし1号シート:アミノ酸肥料の配合・製造(堆肥配合シートと同じ)
  4. 堆肥配合シート:堆肥の配合・製造

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今回は、この中でも「堆肥配合シート」を使って堆肥の設計にチャレンジします。堆肥は肥料の中でも入れる量が一番多い資材です。なので、堆肥の状態は作物に大きく影響します。堆肥を自分で作る場合だけではなく、購入したものを改良する場合のためにも堆肥設計をできるようにしましょう。個人の農家さんの場合、堆肥から作る時間もないため購入するケースも多いです。大規模な農業法人の場合は、堆肥作りからやる場合もあるので、できるようになりましょう。

堆肥とアミノ酸肥料の違い

ぼかし1号シートと堆肥配合シートの内容は同じです。堆肥とアミノ酸肥料は、C/N比によって区分されます。

C/N比 =12/1以下の肥料   ⇒ アミノ酸肥料
C/N比=15/1〜25/1の肥料 ⇒ 堆肥

堆肥配合シートを見てみよう

堆肥配合シートを見てみると、上部には設計エリア、下部には原材料リストがあります。

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原材料リストには、資材として使う有機物がリスト化されています。このリストに表示されているものは乾物重量で、水分量は別で計算できるようになっています。

下準備.入力済の項目をクリアにしよう

これから堆肥配合シートや施肥設計シートを使って、堆肥の設計をしていきますが、前回使ったデータが残っている場合があるので、不要な数字はクリアにしましょう。堆肥配合シートが上記のようにクリアになっているか、施肥設計シートが下記のようにクリアになっているかを確認しましょう。特に施肥設計シートの「必要量(kg)」と「肥料成分量」がクリアになっているか確認してください。

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堆肥設計をしてみよう

堆肥を設計するための前提条件は以下の通りです。

  • 堆肥の材料にはセンイ系の資材と発酵系の資材を組み合わせて使う。
  • 堆肥のC/N比は、テキスト『有機栽培の野菜つくり』189ページを参照し、作物ごとに目指す堆肥のC/N値を調べる(今回はキュウリの15〜25を目指して設計)
  • 堆肥の水分量は40〜50%以上にする。
  • 各原材料の水分量は経験値や成分表示等を参考に記入する。
  • 配合、発酵後の仕上がり水分量は自分で測定する(今回は仮に40%で統一)
  • チッソ定数は、テキスト『有機栽培の野菜つくり』70ページを参照する

この条件を目指して、資材を入れ量を調整することで堆肥を設計します。

材料1.稲わらをいれる

まず、堆肥のセンイ系となる素材の中で、手に入りやすい資材「稲わら」入れていきます。原材料リストを参照すると稲わらはNo.5となっているので、堆肥設計シートのNo.に「5」と入力します。入力すると、種類に「稲わら」が反映されます。

次に、配合重量と水分率を入力します。まず最初の資材なので、とりあえず配合重量は1,000kg(1トン)とします。原材料の水分量は、テキスト等には表示されておらず経験値や成分表を元に記入します。ここでは、水分量を15.0%と入力します。

ここまで入力し終えると、堆肥設計シートの上部枠に、「C/N比50.0」と自動的に表示されます。

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材料2.鶏ふんをいれる

目指す堆肥のC/N比は15〜25なので、C/N比を下げていくためにチッソの量が多いもの(C/N比が低い)資材をリストから選びます。またセンイ系の資材の他にも発酵系の資材も入れる必要があるので、ここでは手に入りやすい鶏ふんを選択します。

堆肥配合シートで、Noに「3」を入力すると、種類に「鶏ふん」が反映されます。ここでは、水分量は25%(経験談から)と入力します。いくら入れたらC/N比が25になるかを想定して、配合重量にいろいろな数値を入れてみます。すると鶏ふん配合重量が「213」の時にC/N比が25になりました。

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3.牛ふんを入れる

C/N比は25になりましたが、水分率をみると16.8%となっています。堆肥では、微生物を活発にさせるためにも、水分率を50%以上にする必要があります。牛ふんは水分量も多く手に入りやすい資材なので、牛ふんを選択します。ここでは、牛ふんの水分量55%とします。

堆肥全体の水分量40%以上、C/N比が15〜25になるように、牛ふんの配合重量に数字を入れていきます。この時、牛ふんだけではなく、鶏ふんの配合重量も操作して、水分量40%以上、C/N比20を目指します。

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いろいろな数値を入れて水分量40%以上、C/N比が15〜25を目指していくと、稲わら 1,000kg、鶏ふん 213kg、牛ふん 3,000kgの時に、「水分量44%・C/N比15〜25」の条件をクリアすることができました。(組み合わせはコレ以外にもいろいろあります)

仕上がり水分率を入力する

堆肥配合シートの「仕上がり水分%」と見ると空白になっています。材料を配合し発酵させて堆肥が仕上がったら、実際の土から水分量を調べて、仕上がり水分量を入力します。発酵させる際に、蒸発する分の補充や微生物を活発にするために多少水をいれます。水分量を調べるときは、生土と投光器で水分を飛ばした土の重さの差を測って、仕上がり水分量を計算します。

ここでは、仕上がり水分量を40%として入力します。

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施肥設計シートにチッソ定数を入力する

施肥設計シートに移動すると、細胞形成型肥料>「堆肥配合から」の項目に、堆肥配合シートで設計した堆肥の各成分が自動的に反映されています。設計した堆肥のC/N比は20なので、テキスト『有機栽培の野菜つくり』70ページのチッソ定数一覧表を参照し、C/N比20のときのチッソ定数を調べます。C/N比20のときのかつ、夏の時期のチッソ定数は0.5なので、窒素定数には、0.5と入力します。

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設計した堆肥量の総量を入力する

堆肥の配合ができましたが、3つの資材をあわせると、堆肥の重量は合計で5700kgになります。堆肥配合シートの総重量の数字を、堆肥設計シートの「必要量(kg)」にコピペします。

堆肥は、設計した量をすべて使うわけではなく、野菜ごとに定められている堆肥:アミノ酸肥料の比率を考えて、どのくらい堆肥を使うかを決めます。

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作物に必要な施肥を調べる

今回は、夏にキュウリを作るための堆肥をつくってみます。テキスト『有機栽培の野菜つくり』189ページを見ると、キューリの施肥は以下のように記載されています。

キュウリの施肥

  • チッソ施肥量:15〜20kg
  • 堆肥C/N比:15〜25
  • チッソ割合:7:3

ここでは、チッソ施肥量が20kg になるように設計します。また、堆肥:アミノ酸肥料の比率を「7:3」に設定しなければならいので、チッソの施肥量20kgを目指すと考えると、

 堆肥7  :アミノ酸肥料3

⇒ 堆肥14kg:アミノ酸肥料6kg = チッソ量 20kg

となります。堆肥14kg、アミノ酸肥料6kg になるように、肥料の施肥量を調整をしていきます。

堆肥とアミン酸肥料の施肥量を調整する

続いて、堆肥14kg、アミノ酸肥料6kgになるように、施肥量を調整していきます。

堆肥の施肥量を調整

堆肥には、設計した堆肥の総量5700kgと入力していましたが、これを2,410kgまで減らしてみると、肥料成分量エリアの堆肥チッソ量が14kgとなりました。

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アミノ酸肥料の重量を調整する

アミノ酸肥料も同じように何度か数値を入れてみて、チッソ量が堆肥14kg、アミノ酸肥料6kg(7:3)になるように設計します。アミノ酸肥料は既に項目として準備してあったオーガニック813(チッソ定数1.00、N8.9% 、P1.5%、K3.3%)を使いましたが、他のものでもOKです。

以下のキャプチャでは、アミノ酸肥料のチッソ量が5.9になっていますが、施肥比率は堆肥70%:アミノ酸肥料30%になっているのでこれで良しとします。

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これでやっと堆肥とアミノ酸肥料の施肥設計が完了です!!これだけでも結構大変です。今後は、アミノ酸肥料やミネラルなどの設計も学んでいくので、先が思いやられますが頑張ります。

練習問題①

稲わら(15%)、鶏ふん(水分量25%)、牛糞(水分量60%)を混合してキュウリの堆肥をつくってみましょう。それぞれの施肥量を求めなさい。

<条件>

  • 水分量は50%を目指す。
  • 仕上がり水分は40%とする
  • キューリの堆肥のC/N比は15〜25
  • C/N比20のときの夏のチッソ定数は0.50
  • キュウリのチッソ量15〜20kg
  • キュウリのチッソ量の割合=堆肥:アミノ酸肥料 = 7:3
  • アミノ酸肥料としてオーガニック813を使うものとする。 
解答例

施肥量は、堆肥2,260kg、アミノ酸肥料67kgで、堆肥の内容は稲わら 600kg、鶏ふん 100kg、牛ふん 5000kgとなる。

※ 肥料成分量が堆肥:アミノ酸 14.0kg:6.0kg(7:3)となる。

練習問題②

上記の計算ができたら、必要な堆肥量を作るために使う堆肥配合のそれぞれの資材の重さを逆算して求めなさい。

解答例

堆肥の施肥量の合計が2,260kgの場合、稲わら:238kg、鶏ふん:40kg、牛ふん:1982kg 

練習問題③

牛ふん(水分 70%)、鶏ふん(水分 35%)、ワラ (水分15%)を使って堆肥を作ります。

<条件>

  • 水分量は50%を目指す。
  • 仕上がり水分は40%とする
  • キューリの堆肥のC/N比は15〜25
  • C/N比20のときの夏のチッソ定数は0.50 
  • キュウリのチッソ量15〜25kg
  • キュウリのチッソ量の割合=堆肥:アミノ酸肥料 = 7:3
  • アミノ酸肥料としてオーガニック813を使うものとする。
  • 必要な堆肥量を使うための資材量の計算もすること
解答例

施肥量は、堆肥 1,420kg、アミノ酸肥料 67kgで、堆肥の内容は牛ふん878kg、鶏ふん146kg、395kgとなる。

堆肥は圃場の管理や経営を踏まえて設計する

テキスト『有機栽培の野菜つくり』188ページを参照すると、作物によって使う堆肥のC/N比は定められています。例えば、トマトはC/N比15〜25、必要なチッソ量は10kgです。このC/N比とチッソ量を施肥設計ソフトにいれて、それぞれ必要な施肥量を計算してみると以下のようになり、C/N比(チッソ定数)によって、必要な堆肥の重さは変わってきます。

  • C/N比=25(チッソ定数0.25) ⇒ 2000kgの堆肥が必要
  • C/N比=20(チッソ定数0.20) ⇒ 1000kgの堆肥が必要
  • C/N比=15(チッソ定数0.15) ⇒ 665kgの堆肥が必要

「C/N比25」の堆肥を使う時は、炭素がたくさん入っているので土壌団粒化の効果が長続きしますが、入れる資材は2,000kg(2トン)となり作業は大変になります。「C/N比15」の堆肥を使うときは、炭素が少ないので土壌団粒化の効果は薄いですが、追肥する必要があります。一方入れる量は、665kgで済むので作業はラクです。このように堆肥設計は、どのように圃場の管理や経営に大きく関わってきます。

ケーススタディ:未熟な堆肥で畑ごと発酵する堆肥づくり

生の原料を使ってイチから堆肥場で中熟堆肥を作った場合、約2ヶ月かかりますが、販売されている不十分な発酵状態の材料を使って、中熟堆肥を作る場合には約1ヶ月で作り上げることができます。この時の堆肥設計を考えてみます。

<条件>

  • もらってきた牛ふんをベースにする(C/N比=20、N=1.2、P=1.5、K=1.5)この牛ふんの発酵状態や微生物の状態はよくわからないものとする。
  • 夏にキュウリを栽培するための堆肥を作る
  • 水分率や仕上がり水分率は考えないこととする。
新たに原材料を新たに登録する

もらってきた牛ふんの情報を、堆肥配合シートに登録します。炭素量は示されていませんが、C/N比が20なので、チッソ1:炭素20:=チッソ1.2:炭素24と算出することもできます。

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堆肥配合シートの設計エリアにNoを入力し、「もらってきた牛ふん」を反映させます。

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チッソ定数を入力する

テキスト『有機栽培の野菜つくり』70ページのチッソ定数一覧表を参照すると、C/N比20のときチッソ定数は0.5なので、施肥設計シートに入力します。

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堆肥とアミノ酸肥料の配合比率を調べる

テキスト『有機栽培の野菜つくり』189ページをみると、キュウリの栽培に必要なチッソ量は20kgで、堆肥とアミノ酸肥料の比率は、堆肥7:アミノ酸肥料3なので、堆肥7:アミノ酸肥料3 = 堆肥14kg:アミノ酸肥料6kg = 20kgとなります。

堆肥の量を決める

堆肥を 2,340にしたときに、肥料成分量のチッソの堆肥量が14kgになりました。

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未熟な牛ふんを使う場合、アミノ酸肥料は発酵型を使う

次はアミノ酸肥料の量を決めます。これまではアミノ酸肥料として「オーガニック815」を使いましたが、今回は発酵が不十分な牛ふんを使うので、オーガニック815のような抽出型アミノ酸肥料ではなく、発酵型のアミノ酸肥料を使います。

抽出型アミノ酸肥料は、未発酵の資材なので全く菌がいない状態です。発酵が不十分な牛ふんにどんな菌がいる状態か分からないので、抽出型アミノ酸肥料を使うと悪い菌のみが活躍する可能性が高いです。そのため、資材の発酵具合(いい菌がいるか)が不確定な場合、いい菌が既にいる発酵型アミノ酸肥料(アミノバードやなっとく有機)を使います。

今回は、発酵型アミノ酸肥料としてアミノバード(N4:P3.5:K2.5、C/N比=7)を使います。原盤シートにアミノバードの情報を入力します。

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施肥設計シートに戻り、堆肥:アミノ酸肥料の比率が7:3になるように、アミノバードの施肥量を調整していきます。

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念押しの微生物活性化

今回は、未熟な牛ふんをベースに堆肥を設計しています。発酵型アミノ酸肥料(アミノバード)も入れましたが、牛ふん2,340kgに対して150kgしか入れてないため、良い菌がしっかり働くか不安なところがあります。その対策として、微生物を活性化する策を講じます。

  • C/N比が高く、微生物のエサとなる米ぬか
  • いい働きをする納豆菌(バチルス菌)

を入れます。納豆菌は施肥設計では計算しないため、米ぬか(水分量15%)をどれくらい入れればいいか設計します。堆肥配合シートに米ぬかを追加し、C/N比が20になるように調整します。調整してみると、米ぬかは300kgがちょうど良いです。

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堆肥の総量が米ぬかを追加したことで2,640kgに変わるため、施肥設計シートの堆肥施肥量も2,640kgに修正します。これで完成です。

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元々、入れようとしていたチッソの量は15〜25kgなのでこのままでも良いのです。米ぬかを追加したことでチッソ総量(堆肥+アミノ酸肥料)が23.5kgと増えてしまっているのを、きっちり20kgにしたい場合は、堆肥配合シートの牛ふんと米ぬかの量と、堆肥の合計施肥量を調整します。

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まとめ

  • 堆肥はセンイ系と発酵系を使う
  • 堆肥配合シートに資材を追加していき、水分量50%以上・作物のC/N比になるように配合を調整する
  • 作物に必要な「チッソ量」と「堆肥:アミノ酸の比率」を調べ、必要な堆肥とアミノ酸肥料の重さkgを算出する。
  • 目指す「堆肥:アミノ酸の比率」になるように、堆肥量やアミノ酸肥料の量を調整する。
  • 未熟な牛ふん等を使って畑で発酵させる場合、抽出型アミノ酸肥料ではなく発酵型アミノ酸肥料を使う。また、米ぬかと納豆菌を入れ、微生物を活発にする。

知っておきたいTips

  • 完成した堆肥のC/N比は目減りすることを想定して、C/N比をプラス2して作る。(C/N比=25で作りたい場合は、プラス2してC/N比=27で作る)
  • 堆肥作りでは必ず屋根のあるところで行いましょう(畑で発酵させる場合は別)。雨などが堆肥に染み込み水分が過剰になると、通性好気の納豆菌(バチルス菌)が酸素不足で活性化せず、腐ってしまいやすいです。
  • 堆肥は黒色のものを使いましょう。赤茶のものは危険です。また、水に溶けやすいかも調べましょう。
  • ソルゴーという作物には、C/N比が25と高く炭素がたくさん含まれています。また堆肥のセンイ素材にもなるため、土づくりをする際にソルゴーを青刈りして粉砕し土に混ぜ込むことで、土壌の団粒化に役立ちます。

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画像引用:夏の刈り敷き、いよいよ開始 あらき農園〜自然栽培の野菜づくり〜

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。