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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

ミネラル施肥で光合成能力強化【石灰(Ca)編】〜有機農業研修レポート〜

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以前に大まかにミネラルについて学習しましたが、そのミネラル一つ一つをこれから深掘りしていきます。今回は石灰(Ca:カルシウム)についてです。

石灰(Ca)

石灰(Ca)はアルカリ性の肥料で、ミネラルの役割分類では防御系に分類されています。

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施肥設計をする際、設計する順は以下の通りにします。この順は、植物が欲しがる要素でもあります。
1.石灰
2.苦土
3.鉄・マンガン

石灰でpH調整

種を植えると、まず根を延ばしますが、この根がセンサーのように周りの環境を調べながら成長していきます。主根から出ている側根からは有機酸(根酸)と水素イオン(酸性)が放出されています。この酸性によって溶かされた養分が根から吸収されますが、酸性のままで取り込まれないよう中和する必要があります。そのため石灰(アルカリ性)をいれ、中和させます。また、植物細胞の細胞膜や細胞壁にも石灰が使われています。ちなみに、根っこが白いのも石灰の色だと覚えていて良いです。

前提として、植物は根酸を出したりするしアミノ酸肥料をいれたりするので、土は酸性になりがちです。これを石灰(アルカリ性)を入れることによって中和します。

トマトの尻腐れが起きるワケ(石灰の欠乏症)

石灰欠乏症が現れるのは、生長の先に現れるため、トマトでは実のお尻部分に症状が現れます。

http://web.tuat.ac.jp/~pdisease/tomato_siri_001.JPG

画像引用:http://web.tuat.ac.jp/~pdisease/tomato_siri.html

細胞の中に入っているものは、細胞の外へ送り出して移動することができるので、欠乏をおこすと成長点へ優先して養分を送ります。一方、石灰の場合、細胞膜や細胞壁に取り込まれているので、欠乏をおこすと新しい細胞から弱くなってしまい、空気中のバクテリアや虫などからすぐに痛みがきてしまいます。そのため石灰欠乏症の場合、根の先や実の先から症状が出てしまいます。

石灰欠乏症になったあと、石灰を補給すれば再起しますが時間がかかります。そのため、最初のうちで石灰不足にならないよう注意しましょう。農家さんでは、経営的な側面から石灰欠乏症になってしまったら諦めてしまう場合も多いです。

ペクチン酸カルシウムがカビを防御

細胞壁には、ペクチン酸カルシウムでできた層があり、カビの侵入から身を守っています。植物の外壁にカビ胞子がつくと、壁に根を下してきます。ペクチン酸カルシウムの層までカビの根が到達すると、壁の役割を果たして防御してくれます。

<カビの種類>
90%:腐性(弱っている・腐敗したものを食べる)
5%:共性(共生環境で生きる)
5%:寄性(健康なものを食べる)

カビの中にはスタミナがあって、厚い層でも侵食してくるものもあります。

カビの病気

カビに起因する病気は以下のものがあります。

イモチ病

稲の病気。稲の外壁は強いですが、イモチ菌はガスの気圧をかけることで侵入してきます。

無性世代の分生子が葉に接触すると刺激で粘着質が分泌されて葉に付着する。分生子が湿度で発芽することによって付着器となり、内部で生成されるグリセロールの圧力(80気圧にも達する)により菌糸がクチクラ層を突き破って植物体に侵入する。いもち病 - Wikipedia

ベト病

ベト病は糸状菌というカビの一種が原因起こる病気で、昼夜の温度格差が大きい3月~4月と10月~11月頃の夜間の湿度が高い(85%以上)で、気温が15~20度の頃に発生しやすくなる病気です。菌は風などで飛んできて葉の裏面の気孔から感染します。発生しやすい春と秋の日没前の水やりが多い時に発生しやすくなります。(引用:ベト病の症状と対策) 

ペクチン酸カルシウムがカビを防御

植物の細胞壁には、ペクチン酸カルシウムでできた層があり、カビの侵入から身を守っています。植物の外壁にカビ胞子がつくと、壁に根を下してきます。ペクチン酸カルシウムの層までカビの根が到達すると、壁の役割を果たして防御してくれます。

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画像引用:有機のチカラ: ミネラルのチカラ

カビの分類
  • 90%:腐性(弱っている・腐敗したものを食べる)
  • 5%:共性(共生環境で生きる)
  • 5%:寄性(健康なものを食べる)

カビの中にはスタミナがあって、厚い層でも侵食してくるものもあります。

シュウ酸カルシウム

植物 = 細胞質:pH7.5、液胞pH:5.5

植物中の乾燥物中の5〜7%が石灰(Ca:カルシウム)です。

植物にはシュウ酸が含まれています。シュウ酸内の水素は、遊離しやすいという特徴があって、根から水素は放出されます。根から出さえた水素イオンは、土に吸着しているカルシウムと置き換わることで、カルシウムが根から吸収されます。

水素が遊離したシュウ酸と、根から吸い上げたカルシウムがあわさることで「シュウ酸カルシウム」ができます。シュウ酸カルシウムは中和された状態となり、液胞(pH:5.5)に貯められます。

シュウ酸 - (水素イオン)+ カルシウム = シュウ酸カルシウム(中和)
シュウ酸カルシウムは液胞(pH:5.5)に貯められる

*液胞:ビタミンや糖などを溜め込んでいるところ

ほうれん草の茎に白い粉のようなものが付着していることがありますが、これは

ほうれん草が細胞に充分すぎるカルシウムを外に放出しているために現れるものです。

ほうれん草は、特にシュウ酸(食べた時にギシギシする物質)が多く含まれていいます。(結果的に水素イオンを放出させる力も強い) 通常の野菜は、pH=6.5程度で育ていますが、ほうれん草にはシュウ酸が多いため、根から放出される水素も多く、たくさんのカルシウムを吸収します。ほうれん草は特殊な植物で、酸性に弱いため、石灰を入れ中和させることで、アルカリ性の強い土壌で生育させます。

植物内での石灰の利用形態

植物の体の中のカルシウム量は乾燥物中に5~7%も含まれています。 動物の体内でカルシウムは骨格を支える骨となっているのと同じく、植物の体内でも骨格を支える機能を果たしています。

  1. 細胞膜の維持
  2. ペクチン酸とカルシウムが結びついて細胞壁を強化している。
  3. 液胞の中で、シュウ酸などの有機酸を中和している。
  4. 酵素の活性化(微力)

石灰の効能

① 細胞壁を強化する。病気に強くなる。

植物の病気の直接的な発生原因の99%はカビによるものです。カビは光合成できないので、葉の表面で胞子が発芽するとセルロースの細胞壁をセルロース分解酵素をつかってトンネルをあけて、細胞まで菌糸を伸ばし、細胞のアミノ酸を栄養にしています。細胞壁に穴をあけられると、そこからバクテリアに侵入され、内部から細胞を破壊されてしまうことになります。ペクチン酸とカルシウムが結合してつくられた構造は、カルシウムのアルカリでセロース分解酵素の酸を中和し無力化し、菌糸の侵入を防ぐ働きがあります。

② いろいろなストレスに強くなる。

カルシウムがよく吸われると、低温や乾燥、病原菌の侵入などにあっても、すぐ感知して対応できます。

③ 炭水化物を実の方へ移行させる。

作物はカルシウムを生育中期から成熟期にかけて、多く必要とします。カルシウムが、同化養分を貯蔵器官(子実)に移行集積させる働きがあるからである。

④ 根を伸長させる。

カルシウムは、植物の分裂組織、とくに根の先端の生育に欠かせない。

石灰の作用

  • 根の発育促進
  • 茎葉の健全強化
  • 根腐れ・心腐れ・空洞化防止
  • 病害抵抗力の強化
  • デンプン造成促進
  • 糖分造成促進
  • 土壌のpH調整(石灰=アルカリ性)
  • 炭酸カルシウムの場合は土壌団粒化にも効果がある

石灰を含む肥料の特性

カキ殻石灰 (炭酸カルシウム CaCO3 )

カキ殻石灰の主成分は炭酸カルシウムです。炭酸カルシウムCaCO3に水(H2O)が入ると二酸化炭素CO2が発生するため、土壌団粒化にも効果があります。カキ殻石灰は最も有用な石灰肥料です。

生石灰(酸化カルシウム CaO)

土の中和力は速効的で、施用して7~10日経ってから植えます。

焼成カキ殻石灰(ハーモニーシェルなど)

カキ殻を焼くことで、有機物を溶かしカルシウムが溶けやすい状態になっています。早く石灰を効かせたい場合はハーモニーシェルなどの焼成カキ殻石灰が効果的です。

溶解度や粒度で使い分ける

石灰の成分によって溶解度が異なるため、使い分けることができます。早くカルシウムを溶かしたい場合は、酢酸を使うと水よりも早く溶けます。酢酸カルシウムとなった石灰は、水をいっしょに養分として送られるので成長点へダイレクトに効くことができます(通常は、下から栄養は届けられる)
葉物の場合、ク溶性と水溶性が5:5と書かれているものが多いです。ハーモニーシェルなどはク溶性と水溶性が5:5の状態になっているそうです。(テキスト③118ページ参照)石灰の粒度によっても溶け方が異なるので、トマトの尻腐れ防止のためにバックアップとして粒度の大きな石灰をいれると、追肥せずに最後まで石灰を効かせることができます。

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ミネラル先行栽培

一般で購入した苗にミネラルが不足していると、水に溶けやすいチッソから吸収されるため「ミネラル先行・チッソ後追い」ではなくなります。ミネラルを苗のときから効かせてそだてると光合成能力が高く、防御機能の高い苗ができます。

Tips

身土不二(しんどふじ)

身土不二は仏教用語で、身」(今までの行為の結果=正報)と、「土」(身がよりどころにしている環境=依報)は切り離せない、という意味。(土の健康=野菜の健康)野菜を作った分だけ、その土は痩せてしまいます。そのため、土が痩せてしまった分は肥料で補う必要があります。牛乳に豊富なカルシウムがあるのは、牧草にカルシウムが含まれているからです。牛乳が普及する以前は大根葉からカルシウムを接種していました。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。