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ミトミネ農場

IT業界の末席から農業の世界に飛び込んでみて日々感じたことや学んだ事を書き連ねます。

細胞作りにアミノ酸肥料を導入〜有機農業研修レポート〜

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前回は、光合成の仕組みとミネラルの働きについて学習しました。今回のテーマは、「細胞作りにアミノ酸肥料(アミノ酸態チッソ)を導入する」について学んでいきます。

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※ 要注意 ※

アミノ酸肥料について学習しますが、有機農業で実際に使うのは「アミノ酸態チッソ」を指します。そのためチッソの役割についてまずは学んでいきます。

新しい細胞をつくる「チッソ」

植物が新しい細胞を作るには「チッソ」が必要不可欠です。テキスト『有機栽培の野菜つくり』の119ページにある「外葉タイプの施肥量」をみてみると、植物の細胞量とチッソの施肥量は比例することが分かります。細胞が多い野菜は、たくさんのチッソが必要ということです。

チッソの施肥量 キャベツ>レタス
チッソの施肥量 玉ねぎ>レタス
※ 玉ねぎは収穫まで8ヶ月、レタスは4ヶ月かかります。

チッソの79%は葉緑体になる

根から吸い上げられた窒素の79%は葉緑体になります。そのため土には最初のうちからチッソを入れて、植物に葉緑体をたくさんつくってもらうようにします。例えば、お米の場合、葉の色がある程度濃くないと(葉緑体が増えないと)お米の収量が増えません。

細胞づくりに必要なチッソの循環

20世紀になって、植物は無機体の窒素だけでも生きていけることがわかりました。ただし、植物が使えるのは土からえられる窒素のみで、空気中のチッソを利用することはできません。

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画像引用:Wikipedia 窒素循環

チッソ循環の流れ

① 植物類は無機的環境から無機物を取り入れ有機物を作る

地球上の有機物は主として葉緑体をもった植物などの生物が光合成によって生成することができるブドウ糖を起点に循環しています。ブドウ糖は炭酸ガスと水と太陽エネルギーによって合成され、生命が生きていくために必要なカロリーを持っているためです。地球の生命の多くはブドウ糖やブドウ糖が形を変えた炭水化物を摂取し、元の炭酸ガスと水に分解することでカロリーを取り出し、生命活動を行っています。 また、植物は炭素の循環以外にも、無機チッソから有機態チッソをつくり、土壌の硫黄を吸収しタンパク質の生成もおこなっています。チッソの循環も、硫黄の循環も植物が起点となっているのです。

植物は、

  • 光合成で二酸化炭素からブドウ糖を作る
  • 無機チッソから有機チッソを作る
  • 土壌の硫黄を吸収し、タンパク質を生成

②動物類は植物類が生産した有機物を消費して、廃棄物を菌類に引き継ぐ。

③菌類はすべての生物の生産物、排泄物、遺体を無機物に還元し、無機的環境へ返している。

化学肥料(硝酸態チッソ)と有機肥料(アミノ酸態チッソ)の違い

化学肥料の「硝酸態チッソ」と有機農業で使う「アミノ酸チッソ」は、どちらも植物に取り込まれると結果的にグルタミン酸になります。このグルタミン酸を原料に、カラダの元であるタンパク質を作っていき、成長点である根の生長を促進する働きがあります。

チッソ は結果的にグルタミン酸になる。

グルタミン酸は、カラダを構成する「タンパク質」の原料となる。

硝酸態チッソ吸収から、根が伸びるまでの流れ

1.根から硝酸態チッソを吸収する
2.硝酸(NO3)→亜硝酸(HNO2)へ還元

植物が硝酸(NO3/錆びたチッソ)を吸うと、細胞質にあるモリブデンというミネラルを含む「硝酸還元酵素(NADH2)」が、水素を供給し硝酸を亜硝酸に変えます(還元)。このときにもエネルギーを使います。

3.亜硝酸(HNO2)→アンモニア(NH4)へ還元

次に、葉緑体の中にある「亜硝酸還元酵素(鉄と硫黄を含む)」が働き亜硝酸が アンモニアに還元されます。またこのときにもエネルギーを使っています。

亜硝酸 + 6還元型フェレドキシン+7H→アンモニア+2H20+6酸化型フェレドキシン

4.アンモニア(NH4)+α‐ケトグルタール酸 →グルタミン酸

最後にアンモニアと、ミトコンドリアのTCA回路から供給されたα‐ケトグルタール酸が合わさることによってグルタミン酸ができあがります。またこのときにもエネルギーをつかいます。

ちなみに、TCA回路には、酸素が必要となるため根の周りに酸素がないとアンモニアを積極的にグルタミン酸に変換できません。

5.グルタミン酸 → アミノ酸になる

できあがったグルタミン酸を原料に、アミノ酸転移酵素によってタンパク質が合成するために必要な23種のアミノ酸が合成されるというわけです。

6.根の細胞が増え始める

アミノ酸(個体の場合はタンパク質)はカラダの元になり、成長点を生長させます。

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画像引用:窒素の同化

この5ステップは、硝酸態チッソを使った場合ですが、硝酸から亜硝酸に還元するときや、亜硝酸からアンモニアに還元するとき、さらにアンモニアからグルタミン酸をつくるときにも「エネルギー(炭水化物)」を消費してしまっていることがわかります。また、亜硝酸態チッソの場合、根→葉→根のように、一度葉を経由しなければなりません。

アミノ酸態チッソを使うと行程を省略できる

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アミノ酸態態チッソを使うと、硝酸態チッソを使った場合に必要だった行程を大幅に省略することができます。また、アミノ酸態チッソの場合は、根→根となるので葉を経由する必要がなく、根がよく伸びます。

ポイント

アミノ酸態チッソを使うと根がよく伸び、炭水化物の節約になる。そのためおいしい野菜ができる。 

アミノ酸態チッソを使うメリット

アミノ酸態のチッソを吸収した場合、根でそのまま細胞づくりに使用されるため、光合成によって生成された炭水化物の消費が少なくてすみます。炭水化物が余ることによって以下のようなメリットがでてきます。

炭水化物を節約するメリット
  • センイの外壁を厚くして病害虫に強くなる
  • 余った炭水化物によって、根酸*、ミネラル吸収量、糖度、貯蔵デンプン、重量、栄養価がUPする

*根から酸を放出(根酸を出す)すると、土でミネラルを溶かして吸収しやすくなります。

アミノ酸肥料の有効性

植物は、アミノ酸態窒素を直接利用することができます。

アミノ酸は、NH2(アミノ基)とCOOH(カルボキシル基)をもつ有機化合物の総称で、23種類あります。アミノ酸は液体で、固体になったものをタンパク質といいます。

タンパク質は、約23種のアミノ酸が脱水結合(H2Oが抜ける)して、個体となったものです。

アミノ酸を使う時は酵母菌も一緒に使う

アミノ酸は、土壌の微生物も利用します。アミノ酸を土に撒いても微生物が食べてしまっては意味がないので、アミノ酸肥料を使う時は、微生物の活動を抑制するため、酵母菌のような有効菌といっしょに使う必要があります。

酵母菌も微生物と同じ菌なのですが、アミノ酸貯蔵庫のような役割をしてくれるので、アミノ酸をほかの微生物に食べられることがなくなります。酵母菌自体はすごく弱くて死んでしまうので、土にはアミノ酸がキープされた状態が続くというわけです。

アミノ酸肥料を使うときは酵母菌も使う

一房にたくさんのきゅうりができる秘密

アミノ酸態チッソによってグルタミン酸が作られる際、炭水化物を節約して合成されると、根酸の量も増えます。根から出た酸は、ミネラルや微生物を溶かして、また根が吸っていきます。例えば、酸で溶かされた酵母菌をたくさん植物が吸うと、酵母菌の本来の働き(ホルモン的な働き)が植物のなかで行われます。その結果、一房にたくさんのきゅうりができてたりするのです。

植物の根では、微生物が養われてそれをまた植物が栄養にしていますが、微生物と植物の関係性は、いまだ研究真っ最中で明らかなっていないことも多いです。

アミノ酸肥料の種類

アミノ酸肥料には2種類あり、それぞれ性能が異なります。

  1. 抽出型アミノ酸肥料(例:フィッシュソリブル)
  2. 発酵型アミノ酸肥料(例:米ぬか発酵させましたみたいなの)

テキスト『有機栽培の肥料と堆肥』76ページの「肥効曲線」をみると、抽出型は早く高い山ができ、発酵型はなだらかなふたこぶ曲線を描いているのがわかります。

抽出型アミノ酸肥料は早く効きますが、効きすぎてしまうためにコントロールが難しい側面もあります。そこで、ミネラルや菌を調整することによってうまく使うようにします。

根の生長の仕方

根が伸びる時、以下のステップで伸びていきます。

  1. 根の先端(成長点)で細胞分裂
  2. 根毛からコンさんがでて、土壌中のミネラルを溶かして吸収
  3. さらに新しい根毛ができる。

新しい根毛は1つの細胞で、チャネルと呼ばれる穴から選択的に土壌のミネラルを吸収しています。

根の観察技術

根の状態をみたいときは、グラスに水を入れてみます。顕微鏡を使って観察する場合もあります。

根と微生物と腐食(堆肥)の関係

人間の腸と植物の根はよく似ています。根には微生物が住んでいて栄養の吸収を助けてくれます。植物は成長点(根の先や新芽のでるところ)でしか成長しません。逆にいえば、成長点でしかアミノ酸は必要ないということになります。

植物の生長の仕方は2種類あって、栄養生長と生殖生長があります。

  • 栄養生長:チッソが豊富なときは葉っぱを大きくして生長する
  • 生殖生長:大きくなったあとに、子孫を残そうとする

Tips

授業ででてきたトピックをご紹介します。


リービッヒさん

植物の生育に関する窒素・リン酸・カリウムの三要素説や最小律を提唱した人。農学部では必ず習う人だそうです。

農業に失敗したドイツ

ドイツは森を切り開いて畑にしましたが、表土を流亡させてしまい結果的に痩せた土壌しか残りませんでした。ドイツの40%は森林ですが、実はほぼ人工林で、土留めとしての役割を担っています。そんなドイツで生まれたのが化学肥料です。ドイツの食事といえば、キャベルの酢漬けやライ麦パン、じゃがいもなど、痩せた土地でも育つ食物が多いです。

ハーバー氏

ドイツ人。空気中のチッソを圧縮してアンモニアを合成し、チッソを得る方法を発見しました。同時に、化学肥料は火薬や爆弾の原料でもあり、化学合成農薬は毒ガスの原料でもあります。

爆弾のメカニズム

空気中にある炭素は、連ねていても水素がくっついたままなので、安定して使うことができます。窒素も同じようにつなげて水素をつけておくことはできますが、衝撃を与えると大爆発してしまいます。これがダイナマイトの原理です。なので、生命は水素ではなく炭素を中心にカラダを作っています。

隠れチッソに注意せよ

有機肥料の表示で、このような表示があります。

肥料名:〇〇オーガニック 8:5:3

Nチッソ8%、Pリン酸5%、Kカリ3%という割合を示していますが、実はチッソの6倍が"隠れチッソ(たんぱく質)"として存在します。これは土壌で溶けるうちに微生物のエサになり、結果的に植物にも供給されることになります。

<例>

N:P:K = 8:5:3の場合
Nの「8」×6倍で、48

Nを48に変えて、PとKの数値を足すと56になります。
48+5+3=56

さらに、100から56%を引いのが炭水化物ということになります。

100 ー56 = 44%(炭水化物)

同様の計算をしてみると

肥料A:〇〇オーガニック 8:5:3

肥料B:〇〇オーガニック 4:3:3

一見、肥料Bの方がチッソ量が少ないように感じますが、実は肥料B(4:3:3)のほうが、炭水化物が多く有利ということになります。

10%ルール

どんなに健康でも、植物は1割は動物にかならずやられてしまいます。ただし、1割以上なにか食われた場合はなにかがおかしいと考えるようにしましょう。

チッソの種類

(1) 硝酸態チッソ(NH3)
化学肥料の"硝酸態"は、硝酸態チッソ(NH3)のことで、酸化したチッソのことを指します。

硝酸態チッソ:NH3

(2) アンモニア態チッソ(NH4)
硝酸態チッソは、酸化したチッソことで酸素と化合しているものですが、その酸素が「水素」に置き換わったものが、アンモニア態チッソ(NH4)です。

アンモニア態チッソ:NH4

(3)アミノ酸態チッソ(C+H2O+NH2)
炭水化物(C+H2O)の後ろにアミノ基(NH2)が付いているのが、アミノ酸態チッソです。

アミノ酸チッソ:C+H2O+NH2(炭水化物+アミノ基)

※アミノ酸とアミノ酸態チッソは同じものとおぼえましょう。

硝酸態とアンモニア態チッソは化学肥料です。空気中からいくらでもとれるため、20世紀はかなり使われてきました。でも、研究が進むにつれて、化学肥料だけだとダメだとわかってきました。そのため、改めて「堆肥」の役割が注目されてきているため、有機農業にシフトしてきています。

今回の学習は以上です。前回の光合成とミネラルの話題に続き、かなり濃い内容でついていくのが大変です。しっかり自分の言葉で説明できるように理解を深めたいと思います。次回は、「堆肥」についての学習に入っていきます。

 

この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。