今回は、ミネラルと光合成の働きについて学習していきます。テーマはずばり「ミネラルで光合成の能力はもっと高められる!」です。
生き物が生きていくための働き
生きていくための働きには、異化と同化があります。異化と同化を合わせて「代謝」といいます。生き物は「代謝」や「呼吸」をして生きています。
- 異化:糖を分解してエネルギーを取り出す
- 同化:エネルギーを使って自分の細胞を構成するアミノ酸にする。
また、細胞が分裂して増えることを「自己複製」といいます。
光合成の仕組み
光合成とは、植物など葉緑体をもった生物が葉緑体を用いて、太陽エネルギーと水と炭酸ガスから炭水化物(ブドウ糖)をつくることです。光合成が行われるのは細胞の中にある「葉緑体」です。
<光合成>
二酸化炭素(6CO2)+水(12H2O)+太陽エネルギー
⇒ ブドウ糖(C6H12O6)+水(6H2O)+酸素
人間は炭水化物を食べることによって得ていますが、植物は光合成によってブドウ糖(炭水化物)を生成しています。夜になるとこのブドウ糖(炭水化物)を利用して、セルロース(センイ)にしたりカラダの元になるアミノ酸にして生長します。
葉緑体の構造:プール(ストロマ)に座布団(チラコイド)がたくさん積まれている感じ。座布団が重なってグラグラしてるのがグラナ。クロロフィルは座布団用シーツで、ソーラーパネルのような役割。
明反応と暗反応の2段階の行程
光合成は、明反応と暗反応の2段階の行程を経て完成します。
明反応の行程(チラコイドでの反応)
1.太陽の光エネルギーがあたることで、光化学反応が起き、クロロフィルの活性化する。
2.光化学反応によって、水(H2O)が分解され、水素イオン(H+)ができる。H+の一部は、補酵素NADPH+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と合体して、NADPHになる。さらに余っているH+がチラコイドに貯まりパンパンの状態になります。するとH+がは外にでようとします。チラコイドの膜上にあるATP合成酵素が歯車のような役割をし、ATPが作られます。(イメージは水力発電)ATP(アデノシン3リン酸)を生産します。ATPは生きるためのエネルギーを体内へ運ぶ役割があります。
<明反応の化学式>
水 +(NADP+)+ 太陽エネルギー ⇒ NADPH + 水素 + 酸素
12H2O+12(NADP+)+太陽エネルギー ⇒ 12NADPH+12H+6O2
※ H+がチラコイドから放出される際エネルギー(ATP)が作られる。
暗反応の行程(ストロマでの反応)
明反応で生成したNADPHの「H+」と二酸化炭素らがくっつくことで炭水化物(ブドウ糖)や水が作られます(還元)。この時の触媒酵素がルビスコといい、光合成の反応を円滑にする役割をしています。この還元にはエネルギーが必要なので、明反応のときに作られたATPを使います。(本当は、カルビンベンソン回路という一連の反応でもっと複雑なことをしています。
<暗反応の化学式>
二酸化炭素+NADPH+水素 ⇒ ブドウ糖 + 水 + (NADP+)
6CO2+12NADPH+12H+⇒ C6H12O6+6HO2+12(NADP+)
* 水素を化学反応させることを「還元」といいます。
光合成の全体式
明反応と暗反応をあわせて以下の化学式となります。
<光合成の化学式>
二酸化炭素+水 + 太陽エネルギー ⇒ ブドウ糖 + 水 +酸素
6CO2+12H2O ⇒ C6H12O6+6H2O+6O2
画像引用:理科年表オフィシャルサイト
光合成についてはこちらの動画も参考になります。
葉緑体に必須なミネラル
また、葉緑体が光合成をするのに必要不可欠なミネラルは、以下のとおりです。
苦土(Mg) |
マグネシウムは葉緑素の中心構造。苦土(マグネシウム)が不足していると、葉緑体が働かなくなってしまい植物の命に関わります。 画像引用:株式会社ミズホ |
マンガン(Mn) |
マンガンは、明反応の際に水を電気分解し水素イオン(H+)を取り出す役割。マンガンが不足していると、葉緑体に電気が溜まりすぎて、バースト(壊れて)してしまいます。 画像引用:マンガン欠乏 |
鉄(Fe) |
鉄は、電子の伝達や葉緑体自体の合成に必要です。 画像引用:鉄欠乏症 |
銅(Cu) |
銅は光化学系Ⅱから光化学系Ⅰへの電子伝達をしている酵素プラストシアニンの中心構造 |
塩素(Cl) | 水の電気分解において酸素発生に関与 |
酵素の働き
酵素はタンパク質でできています。カラダの材料となる炭水化物やアミノ酸をききったり貼りあわせたりしている、いわば大工さんのような存在です。酵素が仕事をするための工具がミネラルです。
- 酵素・・・大工さん
- 栄養素(炭水化物やアミノ酸など)・・建材
- ミネラル・・工具
炭水化物の代表的な物質
光合成によって合成されるブドウ糖は、酵素(大工さん)によって分解・結合され、さまざまな炭水化物に変化します。
ブドウ糖 | C6H12O6 |
ショ糖 | C12H22O11 |
クエン酸 | C6H8O6 |
ビタミンC | C6H8O6 |
酢酸 | C2H4O2 |
ビタミンE | C29H50O2 |
セルロース | ブドウ糖(C6H12O6)が2千〜4千個、分子結合したもの |
例えば、C H2O が6個あればブドウ糖(H6H12O6)になるし、C H2Oが4個あればビタミンC(H6H8O6)になります。酢酸が3個集まることでもブドウ糖になります。
ブドウ糖の脱水結合
ブドウ糖(H6H12O6)とブドウ糖(H6H12O6)が結合すると、ショ糖(C12H22O11)ができますが、このときH2Oが余り結合水として排出されます。朝露はこの結合水です。
ブドウ糖(H6H12O6)+ブドウ糖(H6H12O6) = ショ糖C(C12H22O11) + 水(H2O)
中学の理科で習った蒸散は、太陽の熱から葉っぱを守るために水を蒸発させるものなので、混合しないように注意しましょう。
ブドウが酸っぱくなる理由
充分に日が当たっていないブドウは、水素の量が少なくなり、ビタミンC(H6H8O6)が増えるので、すっぱいブドウになります。
ブドウ糖は、セルロースにもなる
セルロース
セルロースは、ブドウ糖が繊維のように連なっているものです。人間はセルロースを食べてもブドウ糖に分解してエネルギーにできませんが、ヤギはセルロースを分解してエネルギーにすることができます。
リグニン
繊維を絡めるように撒いているものがリグニンです。動物でもリグニンを分解できるのはほとんど居ませんが、キノコは木のリグニンを糖に変えることができるそうです。
画像引用:林産試だより2008年12月号
炭水化物はいのちの素
- 炭水化物 = C +H2O(炭素+水)
- アミノ酸 = CH2O(炭水化物)+ NH2(アミノ基)
- タンパク質 = アミノ酸がペプチド結合でつながったもの (硫黄が
- ※ タンパク質の集まりが細胞
また、炭水化物は熱量(カロリー)をもっています。1カロリーは1g(1cc)の水を1℃上昇させるエネルギーのことです。ブドウ糖1gは3750カロリーあるので、1Lの水を3.75℃上昇させることができるカロリーがあります。
土壌分析と施肥設計
今後の研修では、ドクターソイルという機材をつかって、土壌になにがどのくらいふくまれているのかを分析をしていきます。目視での確認もできますが、デジタル測定器もあって数値化することもできます。土壌分析をしたあと、施肥設計ソフト(Excel版)を利用して、施肥設計をしていきます。
また、酵素とミネラルがどのような働きをしているのかはこの表をもとに覚えるようにしましょう。
酵素の働きを助けるミネラル
リン(P) | 糖代謝等の中間生成物 酢酸、タンパク質、資質 成長、分けつ、根の伸長、開花、結実 |
カリ(K) | 炭水化物の転流、蓄積 硝酸の吸収、還元→タンパク合成 水分調整、細胞分裂、細胞の肥大、有機酸および資質の生成、病害虫抵抗性の向上 |
石灰(Ca) | 植物細胞膜生成強化、酸の中和 細胞を締める成分、病害抵抗力を高める タンパク質の合成、根の育成促進 |
マグネシウム(Mg) | リン酸の吸収、移動 酸素の成分、糖やリン酸の代謝に関与 葉緑体の中心成分 デンプンの転流、脂質の生成 |
硫黄(S) | タンパク質生成 根の発達 |
鉄(Fe) | 酸化還元反応(エネルギーを取り出す) 葉緑素の生成 |
亜鉛(Zn) | 細胞分裂に関与 酸化還元反応 成長ホルモン(オーキシン・ジベレリン) |
銅(Cu) | 葉緑素の形成 タンパク質合成(あぶら虫誘因、遊離アミノ酸) ビタミンCの合成 |
マンガン(Mn) | 酸化還元反応(10種類の酵素) 葉緑素生成・発育に関与(直接要素ではない) ビタミンCの合成 炭酸ガスの吸収に関与 |
ホウ素(B) | 炭水化物やタンパク質の代謝 カルシウムと組んで細胞の結着剤の役目をする 維管束の形成の関与(植物のカラダを支える) |
モリブデン(Mo) | チッソ固定 ビタミンCの合成 |
ミネラルの役割分類
ミネラルの役割には3つの分類があります。
- 光合成系 … 光合成に役立つ
- 防御系 … 病気から守る
- 生命維持系 … 生命維持に役立つ
まとめ
- 植物は、葉緑体で行われる光合成によって、太陽エネルギーと水と炭酸ガスから炭水化物(ブドウ糖)をつくりだしています。
- 光合成で作られたブドウ糖は、酵素(大工さん)の力で炭水化物やビタミン、酢酸などの変化します。
- ミネラルは酵素の働きを手助けし、植物の生命活動を活発にします。
Tips
授業の本筋とは異なりますが、講義に出てきたトピックをご紹介します。
最小律と収量漸減の法則(ドベネックの樽/リービッヒの法則)
必要な要素が一つでもかけてしまうと、全体の収量は減るという法則。現在は17種類必須栄養素があると言われていますが、今後の研究でもっと明らかになるかもしれません。
ユニクロ農業撤退
ユニクロが農業に進出・撤退していたそうです。有名な話かもしれませんが、私ははじめて知りました。詳細はこちらの記事をご覧ください。
カビが病気の原因
植物の病気は、99%はカビによるものなのだそうです。カビは植物の壁を破壊して入ってきます。
今回は、光合成の仕組みを学習しました。次回は、BLOF理論の3要素のひとつ「ミネラル」について学習していきます。
この記事は、研修を実施する「とくしま有機農業サポートセンター」の許諾の元、筆者の復習を目的に記載されています。内容の正確性を保証するものではありませんのであらかじめご了承ください。内容に誤りや不適切な点があった場合こちらまでご連絡いただけると幸いです。